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タイトルユウ・スティンの荒んだ少年時代
投稿日: 2007/07/27(Fri) 07:31
投稿者ハルマキ  <saikyou_harumaki@yahoo.co.jp>

ここは聖ヘレンズ城・・・
ヴィッツア大陸を統治するブレイド3世が住まう城である。
今、この城の稽古場には武器がぶつかる音と厳しい声が聞こえてくる。
「なんだその腰は!!
 そんなへっぴり腰じゃ、当たる攻撃も当たらねえぞ!」
「は、はい!」
厳しい声の主はラウル。
この城の上級兵で下級兵士たちを指導している。
彼の実力は当時、聖ヘレンズ国の2大将軍であった
ジェラルド・ヴァンス、ヴェイク・ジェイルとほぼ互角であったが、
彼は将軍の地位に就くことを拒んだ。
自分と同じ目線で兵士を育てたい・・・と思ったからだという。
「ラウル殿!」
練習中にやってきたのは同僚の巡回兵。
「どうした?何かあったのか?」
「はい・・・実はまた彼が・・・」
「あいつがまた何かやらかしたのか?」

聖ヘレンズ城下町

町の中を銀髪の兵士がリンゴをかじりながら歩いている。
その後ろから一匹の子猫もついてくる。
「ユウしゃん・・・。物を盗んじゃいけないダニよ・・
 これで何回目ダニか?」
子猫が喋った!
・・・いや、この子猫は聖魔である。名前はルカといった。
そして、この銀髪の兵士の名前はユウ・スティンといった。
ユウは今し方、町の露店に並んでいたリンゴを店員の目を盗み、
盗んできたのだ。
「いいだろ?別に・・・」
ユウは言った。
「でも、ユウしゃん・・・。
 稽古に戻らなくていいダニか?またラウルしゃんに叱られるダニよ」
「ふん!あいつなんか俺の気持ちを読めねえくせに偉そうに
 兵士を指導してるしさ」
ユウがそう言いながら町の袋小路を曲がったとき・・・
「・・・何をしておるのだユウ?」
現れたのはラウルだった。
ヤッバ・・・と思ってももう遅い。
ユウは城の尋問室に連れていかれた。

「全て聞いたぞ。
 お前が店の品物を盗んだことも・・・稽古をさぼったこともな!」
「・・・・・」
ユウは無言だった。
「お前は不真面目すぎだ!そもそも盗むなんて兵士のやることじゃない!
 兵士というのは、力なき民を守るのであって・・・」
「うるせえ!」
やっとユウが口を開いた。
「なんだと!?私はお前を思って言っているんだ!
 なのに、なんだその口の聞き方は!?」
「俺を思って言っている?はは!そいつはいいや!」
ユウはまるでラウルを馬鹿にするように言った
「だけどな、あんたには俺の気持ちはわかっていない。
 俺が過去に負った深い心の傷をなんにも知っちゃいねえんだ!」
「ユウ!」
ラウルは呼び止めたが、彼は振り向きもせず
尋問室を後にしていった。
「・・・あの馬鹿者が・・・」
彼はそっとつぶやいた。

かつて、ユウの父親は魔王の腹心である
魔将軍からルカを守ってそのまま亡くなった。
それ以来、ユウは心に深い傷を負うようになっていた。
しかし、彼は父の仇を取るため、かつて父が働いていた
聖・ヘレンズ城の兵士になろうと決める。
最初は真面目に稽古をしていたのだが、ある日届いた
兄・ルイの手紙を見て、彼は変わった。

−父さんの仇は俺に任せておけ・・
 だから、お前は好きに暮らすといい−

ルイにとっては弟を思う気持ちで書いたのだろうが、
ユウにとってこの手紙は、やる気を失わせる物でしかなかった
「ったく・・・ラウルの野郎だってルイ兄だって
 みんな俺の気持ちをわかってないぜ・・・
 くそ!」
彼はやり場のない怒りを壁に叩きつけた。
「ユウしゃん・・・」
後ろからルカがユウの様子を見ていた。

数日後、ラウルは魔獣アラーネア討伐の任務を受けた。
彼は兵士を率いて、アラーネアのいるという森に向かった。
当然、ユウも例外なく・・・
ユウは最初からやる気がなく、鎧をつけている以外は
ほぼ丸腰に近かった。
やがて、アラーネアの居場所についた。
アラーネアはラウル達に気づくと、鋭くとがった足で
こちらに襲ってきた。
兵士たちは次々と足に群がり、斬りつけている。
ラウルも隙を見て、弱点である目を攻撃している。
ただ、そんな状況下でもユウは参戦せずに見ていた。
「こいつで終わりだ!天空昇!!」
ラウルの天空昇がアラーネアを突き上げる。
地面に叩きつけられたアラーネアは動かなくなった。
「ふう・・・」
彼は一息つくと、参戦せずに見ているユウの元へ向かった。
「お前、どういうつもりだ!
 我々が戦っている中、戦おうとしない!
 それに剣はどうした!」
「・・・・・・・」
ユウは無言だった。というのも、彼はあるものの
動きをとらえていたからだ。
そのものは、どんどんこちらに迫ってくる。
それは、倒したはずのアラーネアだった。
「ラウル!危ねえ!!」
ユウが叫んだときにはもう遅かった。
ラウルはアラーネアの足で胸部を一突きされ、
その場に崩れ去った。
この瞬間、ユウに怒りがこみあげてくる・・・。
「よくも・・ラウルを・・・」
ラウルの剣を持つと、彼はアラーネアに飛びかかっていった
「燃えな!紅蓮!」
炎を帯びた剣がアラーネアを焼き、今度こそアラーネアは動かなくなった。
「ラウル!」
ユウは倒れたラウルに駆け寄った。
仲間の兵士たちも駆け寄ってくる。
「・・・まさか・・お前が倒すとはな・・・」
「喋るんじゃねえ!今、おくすりを・・・」
ユウはおくすりを取り出そうとしたが、ラウルに止められた。
「無理だ・・・。もう私は助からない・・・・」
「何言ってんだよ!」
ユウの目には、涙がたまっていた。
傷が深いのにもかかわらず、ラウルは彼に語った。
「・・・誰か守りたいという気持ちがあれば・・・・
 それが力となるんだ・・・・。」
「っ!」
「ユウ!私のぶんまで・・・生きて・・・くれ・・・」
それが、彼の最期の言葉だった。
「ラウルーー!!!!」

城に戻り、ユウはラウルの戦死を報告した。
国王ブレイド3世もラーハルト司令、そしてジェラルド、ヴェイクも
このことに驚きを隠せないでいた。
やがて、部屋に戻った彼はただ静かに泣いていた。
ルカも彼の気持ちを察して声をかけずにただその様子を見ていた。
「俺の目の前で、また親しい人が亡くなった。
 俺を守ろうと・・・」
ユウの記憶に、再び目の前で斬りつけられた父の姿が
蘇ってきた。ずっと、忘れようと思っていたこの記憶を・・・。
だが、忘れてはならない。父やラウルの思いを無駄にしないためにも・・・。
「ラウル・・・。俺、将軍になるよ・・・」

それから数年の時が流れた。
「ユウ・スティン!」
「はい!」
ラーハルト司令に名前を呼ばれ、彼はひざまずいた。
「本日より貴方に将軍の地位をさずける!」
「光栄でございます・・・」
ユウは後ろで立っているシェイド、リナの元へ行こうとした。
「待て、貴方に渡したいものがある。」
ラーハルト司令がユウを呼び止めた。
ラーハルト司令の手には彼にとって見覚えのある剣が
握られていた。
「ラウル殿の使っていた光剣ヘヴンズブレイドだ。
 使うといい。」
「ありがとうございます!」
ユウはラーハルト司令から剣を受け取り、
後ろを振り向いた。
立っているシェイドとリナの間にラウルの残像が見えたような気がした。

−ラウル・・・。今度は俺がみんなを守る番だ。
 だから、この剣を通して俺を見守っててくれ−



あとがき
長い上に、文章がぐちゃぐちゃなような気がしますが・・・(爆)
楽しんでもらえたら光栄です。
ユウにもきっとこんな少年時代があったのではないかと
思い、書いてみました。
ちなみにユウの特技に「盗む」があるのですが
これは少年時代に培われたのではないかと思います(笑)。
    

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ユウ・スティンの荒んだ少年時代 - ハルマキ 2007/07/27(Fri) 07:31 No.54


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