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タイトル一人と一匹の絆
投稿日: 2006/11/27(Mon) 14:48
投稿者自由男

第一章 「一人と一匹のケンカ

「ユウしゃんとはもう絶交ダニ!」
「なにぃ!俺ももうルカなんかとは口も聞いてやるもんか!」
二人分の怒鳴り声が響く。いや・・・正確には一人と一匹のだが。
「またやってるのか・・・。」
呆れた口調でそう呟きながら青年が部屋に入ってきた。
彼の名前はカイン・ヴァンス。聖へレンズ帝国の中でも四人しかいない、
将軍の地位につく男である。
先ほど口も聞いてやるもんか!と叫んでいた男の名はユウ・スティン。
彼もまたその将軍の一人である。
そして・・・そのユウと言い争っていたのは一見すると猫にしか見えないが、
”聖魔”という生き物。名前をルカといった。
彼は昔殺されかけたところをユウとユウの父親に救われた。
・・・彼の父親の命と引き換えに。
そんな彼に恩返しをしたいと思い、それからずっと一緒にいるのだが・・・。
「大体ユウしゃんはいつも・・・」
「またケンカしてる・・。」
呆れた口調で今度は少女が入ってきた。
彼女の名はフリージア・ラスター。精霊術士の少女である。
また、という言葉でわかると思うが、彼らのケンカは日常茶飯事なのだ。
そしてその理由も他愛のないものなことが多い。
今回のケンカもまた他愛の無いもので、ユウの鯛焼きをルカが食べたんじゃないか
とユウがルカに怒っただけなのだが・・。
「もうユウしゃんのそばにはいたくないダニ!!」
そういうと、ルカは外に向かって駆け出していった。
「おい、ユウ。いいのか?」
カインがユウをたしなめる。
「いいんだよ、もう絶好したんだからな!」
「やれやれ・・・。」
まぁいつものことだ、とカインもユウをたしなめるのをあきらめた。


第二章 「一人の指令」

「ユウ将軍、指令を言い渡す。」
王の間に、四大将軍が集結している。そこでユウも指令を受けていた。
「貴公の任務は魔獣の森の調査だ。」
「以前カイン将軍にも調査をしてもらったが、万が一ということもあるからな。
 また、調査にでてもらう。今回は危険も少ないだろうから、貴公一人での任務となる。」
「わかりました」
王の間を出る四大将軍。カインがユウを呼び止めた。
「おい、ユウ。大丈夫なのか?」
「大丈夫だって。この俺様にかかればなぁ、一人でも大いなる愛と愛と愛で・・・」
「じゃなくて!」
カインが否定する
「ルカのことだ。探さなくていいのか?」
「ルカ?ああ、きっと腹が減ったら戻ってくるじゃねぇか?」
「まったく・・。」
カインはもう何もいえなかった。
「じゃあ行ってくるぜ!」
ユウは一人魔獣の森へ調査にむかった。


第三章 「一人と一匹の森」

「ユウしゃん・・まったくひどいダニ!」
ルカはそう呟いた。木々の生い茂る森の中で。
彼は部屋を飛び出した後、魔獣の森へと来ていたのだ。
彼は元々森で暮らしていたからか、森の中が落ち着くのだろう。
気がつくとこの場所まで来ていた。
ザッザッザッ・・・。
木の葉を踏む音が聞こえる。男が一人歩いてきた。
「(!ユウしゃん!!)」
やってきたのはユウだった。
「(全く、何しに来たダニか・・。)」
ルカはとっさに身を隠した。
「特に異常はねぇか。ま、この間カインが討伐に来たからな。」
ルカには気づかない。そのまま戻ろうとしたその時・・・。
「おや、あなたは・・・。」
ユウに向かって放たれた声。それは黒いマントを着た一人の金髪の青年から発せられた。
「!お前は!?」
「ふふ・・・どうやら貴方お一人のようですね。
 今のうちに邪魔な四大将軍には消えてもらいましょうか。」
次々と集まる魔物たち。彼は魔族の幹部、魔将軍のキリトというものだった。
「へっ!お前らなんかなぁ、俺様の愛と、愛と、愛でぇ・・・。」
「強がりはやめて下さい。一人でこの数には勝てませんよ。」
キリトから殺気が放たれる。
「(!大変ダニ!)」
ルカは走り出していた。
ケンカしていたことなどもうとうに忘れていた。
カイン達に知らせなければ、彼の頭の中にはその事しかなかった。
彼の瞳から涙が流れだした。似すぎている。あのときに。
あの日、黒いマントを着た男に、自分が殺されかけたとき。
そして・・・ユウの父親が死んだときに。
「(ボクが馬鹿だったダニ・・・。ユウしゃんに恩返しがしたくてそばにいたのに!!)」
ルカは自分を恥じた。
彼の足から、胴体から、血が流れだす。
どこかで切ってしまったのだろう。だが、彼にはもう痛みなどなかった。
「グルルルル・・。」
彼の前に魔物が立ちふさがった。
「そこを・・・退くダニ!!」
迷いはなかった。魔物達に向かって体当たりをかました。
そして、なおも走り続けた。


第四章 「一人と一匹と仲間達」

「よく頑張りましたね、お一人で。でも・・・」
キリトの手に黒い光が集まる。
「これで終わりですよ。」
「ちっくしょう・・。」
ユウの顔にあきらめの色が見えた。既に全身ぼろぼろとなっていた。
彼は一人でも勇敢に戦った。だが・・数が違いすぎた。
「さようなら・・。」
キリトが手をユウに向けた。その瞬間・・・。
「燃え尽きろ!!」
キリトの体に赤い閃光が走った。
「くっ・・・。」
そこにはカインが立っていた。
キリトに聖へレンズ帝国騎士団の技、紅蓮を放ったのだ。
「炎の精霊、イフリート!!お願い、力を貸して!」
召還される炎の精霊。次の瞬間、魔物たちは炎に呑まれた。
フリージアがイフリートを召還したのだ。
「ユウ、無事ですか!?」
更に四大将軍唯一の女性、リナ・ロンドがユウに声を掛ける。
「お前達、なんでここにいるんだ?」
ユウは驚いていた。何故一人の任務だったのにカイン達が駆けつけたのか、と。
「ルカが教えてくれた。」
カインが答えた。
「ユウしゃん・・・無事で良かったダニ。」
フリージアの腕の中、傷だらけのルカがユウに微笑んだ。
「ルカがぼろぼろになって走ってきて、ユウが危ないって・・。」
フリージアが説明した。
ユウの心に、熱いものがこみ上げてきた。
「へっ・・ありがとな、ルカ。お前は、やっぱり俺の親友だぜ!」
ケンカをしていても、自分の命も顧みず走った親友に、ユウは感動していた。
その感動からか、ユウの体から疲労の色が消えうせた。
「最大の技で、一気に攻めるぜ!!」
「光の波動が俺を導く!!」
「闇を切り裂く大いなる光と!!」
「俺様の愛と愛と愛で!!全てを断つ!!」
「邪悪なるものよ!!光へ消え去れ!!」
ユウがまさに技をキリトへ放とうとした瞬間!!
「この人数では分が悪いですね。ここは一度退きましょう。」
あっさりとキリトが引き上げた。
「あ・・・。」
ユウの体から力が抜けていった。


第五章 「一人と一匹の連係」

「まったく、とんだ任務だったぜ・・。」
城下町に戻ると、ユウが愚痴をこぼした。
「ごめんな、ルカ。」
ずっといえなかった言葉をユウが口にした。
「ボクのほうこそ、絶好だなんていってごめんダニ・・。」
二人は仲直りをした。
「お帰りなさい、カイン将軍!!」
カインの部下のリュウが全員を出迎える。
その口に・・・餡子がついていた。
「リュウ・・その口についてるのはなんだ?」
カインが聞く。
「あ、これですか?さっきあっちにおいてあった鯛焼きを・・。」
ごごごごご・・・。
ユウとルカの体からものすごいオーラが放たれた。
「リュウ・・・とりあえず逃げろ。」
カインがリュウを逃がそうとした。だが遅かった。
幻のユウとルカの合体技がリュウに向かって放たれた。

さて・・それからのユウとルカだが・・。
「ユウしゃんは聖魔づかいが荒いダニ!!」
「なにぃ!」
あんまり変わってなかった。
「まぁ・・ケンカするほど仲がいいと言うしな・・。」
カインから半ばあきらめのような言葉がでた。

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一人と一匹の絆 - 自由男 2006/11/27(Mon) 14:48 No.4


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