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タイトル釣りロ○ンを求めて(2)
投稿日: 2006/11/27(Mon) 15:11
投稿者にょにょも

「いやぁ〜助かったよ、ルイ兄」
ユウは嬉しそうに言うと、差し出されたコーヒーを一口啜った。
パチパチと音を立てて燃える焚き火の向かい側にルイが座っている。
「ルカの奴、起きねぇんだもんよ〜。参ったぜ、ホント」
ライドネル村の途中の道で、ウロウロと彷徨っているユウをルイが発見したのは、ほんの20分前のことだった。
「相変わらず、だな。だがよくココまで来られたな。少しは進歩したのか?」
「いや〜、それがさあ。偶然、ライドネルの方に行く荷馬車に乗せてもらったんだけどさ〜....」
「『ありがとう、おじさ〜ん♪』なんてニコニコ手を振って、見送った後でどっちに行けばいいのか判らなくなった。そんなトコか?」
「うん。ここって真っ暗だし、周りは草木しかないし、急に心細くなるしさ....。
あっ!そういやルイ兄、どうしてこんなトコで野宿してるんだい?」
「....たまに気分をかえてみたくなるんだ。」
「.....あ!、ゴメン。」
「どうして謝るんだ?気にする事は無いだろう。父さんの敵は俺が必ず討つ。お前はお前の道を進めばいいんだから、な?」
「俺にも少しは手伝わせてくれよな。ルイ兄ばっかりに苦労させたくないんだ。だって....俺。」
「真っ暗闇でも一人でトイレに行ける様になったらな。」
そういってルイはニヤリと笑い、コーヒーを啜った。
「くう〜〜〜。もう寝る!おやすみっ!!」
ユウは毛布を頭から被るとその場で横になった。
(ルイ兄の馬鹿野郎!わからずや!もうあのときの子供じゃないんだからな。俺だって、俺だって....。)
そんなユウを見つめながら、ルイは

「その気持ちだけでいい。あれはお前の手に負える相手じゃないんだ。多分、今の俺でもな。」

と、小さくつぶやいた。


 ユウが目を覚ますとルイの姿はもうそこには無かった。
「次に会ったら、毛布返さなきゃな....って、あれ?ルカ?」
眠い目をこすりながら周囲を見回すと、水辺の方にちょこんと座っているルカの姿があった。
(ん?誰かいるみたいだな)
ふらふらと近づいていくと、それはディアだった。
「起きたか。銀髪、後ろには立つなよ!釣られたくなかったらな。」
ひゅん!
と音がして、キラキラ光る何かが前髪をかすめた。それは釣りの仕掛けだった。
「わわっ!お、おい!危ねえな〜。」
「だから言っただろうが!釣り針には『カエシ』が付いているんだ。刺さると中々抜けないんだよ。」
「うああ、痛そうダニ」
「大の男がペンチで掴んでも抜けないからね。最悪の場合は切って開くしかないのさ。」
言いながらディアはリールを巻き、糸をピンと張らせると竿を置いた。
「ところで、本当に釣れるのか?レギョンだぞ、相手は....。」
ディアはスッと立ち上がり、大きな杭に括り付けてある一本のロープを指差した。
「一週間前にワナを仕掛けておいた。あとはこれを引き揚げるだけさ。ちゃんと入ってるよ。」
「成る程〜、保険を掛けた訳だな。じゃあもう釣る必要ないじゃんか?今度は何を狙ってるんだよ。」
「ライドネルクジラさ。この前は取り込みにしくじっちまったが....、ん?」
その瞬間、ぎゅぎゅうーん、と
竿先が、大きく弧をえがいて水面に突き刺さった。

「な、なんかひいてるダニ!」
「ま、まさかクジラ?!」
リールからはものすごい勢いでラインが引き出されていく.....。
「銀髪!そのロープをほどけっ!」
ディアは小舟を繋いでいるロープを指差した。慌ててユウが解きだすと彼女は小舟に飛び乗った。
「お前も来い!」
ユウも乗り込み、小舟は岸を離れた。
「コイツは一体なんなんだ?」
「多分、この湖の主かもしれないが....その正体を見た奴がいないんだよ。」
水面を走るラインが緩んだのを見て、ディアはゆっくりと竿を立てながらリールを巻いた。
「銀髪、もっと漕いでくれ。根に入られたらアウトだ....。」
「く〜っ、人使いの荒い姉ちゃんだぜぇ。よーし、俺様の実力みせてやるぜ〜!!」

その15分後。
「ひ、ひいぃ....。ぜえ、ぜえ....。も、もう、ダメ....」
「後もう少しだ。ほら、もう見えてきた。かなりの大物だよ」
魚の影が水面にゆっくりと浮かび上がってくる。それは二人の乗っている小舟とほぼ同じ大きさだった。
「すっ、げえ〜。おい、これなんていう魚なんだ?」
「....。」
彼女は水面を凝視したまま動かない。が、その肩はかすかに震えていた。
「ま、そんな大物釣れたら感激で声も出せないよな」
「まさか、こんな事って....。」
「うわっ、何だ!?」
小舟が大きく揺れて魚が水面から顔を出した。
ワニみたいな頭部、鎧を着けたような体に、水かきのついたひれ。
それは二人が見たことの無い魚だった。魚はジャンプを繰り返し必死に抵抗した。
小舟は大きく揺れ続け、二人は船べりにしがみつくだけで精一杯だった。
揺れが収まった時にはもう、魚はいなくなっていた。
「あ〜あ、逃げられちまったか。勿体無かったな、大物だったのに」
「いいさ、主の顔を拝めたんだからね」
「あれ、結局なんだったんだ?」
「さあ、知らないねえ....。あえて言うなら古代魚かな」
「おかしな湖だよな、ココは」
「さ、岸に戻るよ。サッサと漕ぎな!」
「少しは休ませてくれよな〜〜」


その夜、城下町のレストランではレギョンのフルコースがテーブルに並び
皆、その美味しさに夢中になっていた。
そこへ一人の女性が入ってきた。
「こんばんは、そちらのワインうちに間違って届いてたわ」
「お、マリンちゃん。いいところにきたね」
「あら、なあに?楽しそうね」
「実は.....。」
ダークはレギョンとP・Pの話をマリンに聞かせた。
「私もこういう商売してるから気になるわ。是非味見させてくださいな」
コ、コ、コ。と音を立ててパニュールピニョールがグラスに注がれた。
「ありがとう」
マリンはそのまま一口目を味わい、そしてレギョンの卵を食べてもう一口飲んだ。
「どうだね?素晴らしいだろう」
ダークはまるで、新しいおもちゃを自慢する子供のように誇らしげな笑みを浮かべて訊いた。
「ええ、驚きましたわ」
ダークは満足そうにうなづく。
「このワインとおんなじ味なんですもの」
「え?」マリンは持ってきたワインを指差した。それは最近よく売れている安物のワインだった。
「マスター、このワイン開けていいか?」
「どうぞ、それ人気があるんですよ。」
新しいグラスに注ぎ、香りを確かめて一口含む。
「!!!!!!!!!!!!!!!!」
カイン達もワインを飲んだ。
「全く、と言っていいほどよく似ている」
「つーかさ〜、同じでしょ?」
「美味しいでしょ?これね、たったの250ペインなの」
それを聞いたダークはひっくり返ってしまった。
「わ〜!ダーク参謀」
「きゃ〜、なんか私悪いこと言っちゃったかしら」
「ダークしゃん、なんか哀れダニ」
ダークはそれから一週間ほど寝込んでしまった。
その後しばらくの間、彼の前ではワインの話は禁句だったという。

<おしまい>

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釣りロ○ンを求めて(2) - にょにょも 2006/11/27(Mon) 15:11 No.37


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