タイトル : 愛と度胸と敗北と 投稿日 : 2006/11/27(Mon) 14:58 投稿者 : ゼロ
……きっかけはラーハルト司令の気紛れだった。
「ふむ、将軍足る者剣技のみならず精神も鍛えねばならぬな」
……この時、その気紛れが『あんな』大事になるなどと誰が予想しただろう。
……否、誰しもがあのような事態を想像することなどありえなかった……
【愛と度胸と敗北と】
「……という訳で四大将軍による肝試しを実行することに……」
「いやだああああっ!」
「……落ち着けユウ!」
……ここは聖ヘレンズ城兵士用宿舎の一室。
現在はこの国が誇る四大将軍が勢揃いしている。
その中でこの国一の腕を持つ将軍シェイド・ハーベルトが指令を伝えていた。
……因みに、物凄い悲鳴を上げていたのはユウ・スティン。
悲鳴を上げようが何だろうが彼もれっきとした将軍である。
そしてユウをなだめているのがカイン・ヴァンス。
一言で説明するならば『レアに生きる男』だろう。
勿論、彼もまた将軍である。
……ええと……最後の一人は……お、居た。
うつむいてこめかみを押さえつつ溜め息をついている女性がリナ・ロンド。
四大将軍中、唯一の女性だが実力は劣ってはいない。
その四人に与えられた今回の任務……それは
『精神面を鍛える為に肝試しをしろ』
……ああっ、そこの人! 『戻る』とか押しちゃ駄目!
と、ともあれその旨をシェイドより他の将軍に伝えていたところなのだ。
「いやだあああっ! 俺の愛と愛と愛で絶対にそんなの阻止してやるーっ!」
「落ち着けユウ! ……だが確かにいまさら肝試しなど……」
「因みに、成功した場合カインにはパニュール・ピニョールが支給される」
「さあ! 頑張ろうじゃないかユウ!」
「仲間より酒を取るなあああっ!」
「ただの酒じゃない、レア酒だ」
「同じだあああっ!」
「……ユウ、あんまり叫び続けると喉が枯れるわよ」
「そう思うんだったら援護してくれえええっ!」
「ユウ、まあ落ち着いて聞け」
そう言いカインはユウの耳元でコソコソと
「ここでお前の勇気あるところを見せればリナからの評価も上がるぞ」
「よおおおっしっ! 俺様の愛と愛と愛で乗り切ってみせる!」
……この時、シェイドとリナの思考はシンクロしていた。
((こいつら単純過ぎる……))
かくて四人は有名な心霊スポットたる、ある洞窟に来ていた。
場所? ……それはヒ・ミ・ツ♪ うふ♪
……そこおおおっ! 『戻る』とか押すなあああっ!
「……で、ユウはどうしたんです?」
「さあ、準備してくるって」
「無駄に時間を浪費させるな……」
「はっはっはっ! 待たせたな! 俺様の勇姿を見るが良い!」
物陰よりユウ登場、三人しばし沈黙。
「……なあユウ。一応聞くが、その全身にくっ付けている『モノ』は一体なんだ?」
「ふっ、これこそ俺の愛と愛と愛で集めた必殺の防御アイテム!」
「どこをどう見ても……ただの十字架やお札にしか見えないのですが?」
「ふっ、まだまだ甘いなリナ。これはひとつひとつ別々の場所で入手した物ばかり、
つまり! 全部違う御利益とかがあるはずなのだ!」
「……なんかありがちに『安産祈願』とかが混じってるようだが……」
「塵も積もれば山と成る! 下手な鉄砲数撃ちゃ当たる!」
「ようは藁にも縋りたいと」
「しかもそれだけ付けてても足は震えているし」
「……お前等、馬鹿なことをやっていないでさっさと行くぞ」
「そうですね……」
「ああ、さっさと終わらせてパニュール・ピニョールで一杯飲もう」
「ああ! 俺を置いていくなーっ!」
んでもって洞窟内。
「……本当に何か出てきそうだな」
「は、はは。そ、そんなわけないではないかカイン君」
「……ユウ、本当に大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だリナ。お、俺様の愛と愛とアイアイと……」
ぴた……っと先頭のシェイドが唐突に足を止める。
「どうしたシェイド?」
「今、何かが居た……」
「ぎょひぃええええっ!」
「ユウ落ち着いて。何かの見間違えでは……?」
「いや、何か居る!」
……ゆらり
「ほっ! ほんとにどぅえたああああっ!」
「いや……こいつは幽霊じゃない……ゴーストタイプのモンスターだ!」
幽霊とゴーストタイプのモンスター、どこがどう違うかと言いますと、
人間や動物が化けて出たのが幽霊。
最初から幽霊っぽい姿をしているのがモンスターとなります。
「モンスターならば倒すのみ! いくぞユウ……」
「くくく、くらえええっ! ひ、光の翼あああっ!」
「ちょっ、ユウ、こんなところでそんなのを使ったら……」
カッ! ドオオオン!
ってな感じで技は発動し、そして老朽化していた洞窟は……
ガラガラガラガラ……
……その後、何時までも四人が帰ってこないのを心配した部下達が来てみると?
なんと! 生き埋めになった四人を見つけたのだった……
……そして、歴史では語られることはなかったが、
この事はシェイド唯一の敗北として一部でヒソヒソと……
だあああああっ! だああかああらっ! 『戻る』押すなっつーのっ!
……って、そろそろ良いか。それでは……
おそまつっ!
P.S シェイドにこの事を聞いてみました。
「……くだらん。ならば誰が『勝者』なのだ?」
だとか、……まあ、痛み分けってとこすかね?
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