「貴方とこうして1対1で戦うのは、聖ヘレンズ国以来でしょうか」 「ああ、そうだな。ようやくケリをつける時が来たぜ! フリージアを騙し、殺したお前を俺は許さねえっ!!」 ユウが剣を抜き、キリトも彼に対抗して鞘から剣を抜いた。 辺りには、この2人以外は、誰もいない。 ルイとバジルは別の場所で、戦っている頃だろう。 此処はシェイドが待つ場所からも離れた場所の為、彼の助けが入る事はない。 勿論、彼の性格上、助けには来ないだろう。 「ふっ、カイン将軍と同じ事を言いますね。 いいですか?彼にも言いましたが、騙される方が悪いのですよ」 「なんだとっ!!」 「カイン将軍とゼロが同一人物だと知っていれば、 あのような事にはならなかった、……そうですよね?」 「へっ、よく言うぜ! フリージアがその事実を知らないってのを予め知っていたから、 あの計画を思いついたんだろ?」 「……ふっ」 「さあ、剣を抜いてどうするつもりだ?魔獣の姿になるんじゃねえのか? それとも、あの時のように最初は様子見かい? だったら、魔獣に変化する前にお前を倒してやるぜっ!!」 ユウが剣を握りしめ、キリトに向かって駆けてゆく。 「力だけの戦いなんて、私は好みませんからね。 あの時の戦いでは後悔しています」 「醜い化け物がお前の本当の姿だろうがっ!!てえいっ!!」 ユウの紅蓮がキリトを襲うが、キリトは軽く交した。 「ふ、まだまだですね」 「ちいっ!素早さだけは一流だなっ!!!」 「さあ、始めましょうか。哀愁のカタストロフィーを……」 そう言いながらキリトは、詠唱し始めた。 「ターム!」 「なんだ?何の魔法だ?」 「貴方に、この私の動きが見えますか?ほらっ!」 「奴が……消えたっ!?ぐあっ!!」 ユウは瞬時に後方の岩までに吹き飛ばされた。 「速度が……」 キリトの唱えた魔法は速度を何倍も増幅させる効果のあるもの。 人の目ではなかなか追う事は出来ない程、彼は速く動いている。 「ふふ、見えますか?見えないでしょう。 私のこの速度についてこられる者等、いませんからね。 さあ、どうします?素直に負けを認めますか? 勿論、どう答えても此処から生きては返しませんけどね」 「へへっ、何言ってんだ……そんなの簡単な事じゃねえか! お前の速度を超えればいいんだろっ!」 「出来る訳がありません」 「甘くみてんじゃねえよ!そらっ、光陣突で限界まで飛ばすぜっ!」 「光の渦に飲まれたまま体当りですか?かなりの速度ですが、 その程度では当たりはしませんよ」 キリトが軽々と交すが、その先にはユウが剣を構えて立っていた。 「バーカ!そいつは囮だっ!俺はこっちだよっ!!」 「なっ!?何故そこにっ!!」 「初めから勝負を長引かせるつもりはねえっ!キリト! これで終わりだっ!うおおおぉっ!月よ出ろーっ!俺的・月光翼っ!!」 凄まじい爆音とともに、月光翼に似た技がキリトに炸裂した。 カインが聖ヘレンズ城にてラーハルトを倒した、あの技である。 「ぐっ……ユウ将軍……強くなりましたね……」 「へっ、あれから何もしていなかった訳じゃねえよ。 これで少しは俺の実力を認めたかよ?」 「ええ、ですが、まだです。このままで終わるとでも思っているのですか?」 キリトは剣を構えてユウに斬りかかろうとするが、既にその力はなかった。 ゆっくりとした動きで今にも倒れそうな様子だ。 「あばよ、キリト」 ユウのヘヴンズ・ゲートがキリトに留めをさした。 キリトの死を確認すると、ユウは剣を鞘に納め、その場を後にした。 「お前の敗因は、魔獣の姿で戦わなかったところだな。 ……まあ、仮にそうなっても勝つのは俺だけどな。へへっ」 |