龍谷の滝へ訪れたシェイド達。 だが谷の頂上付近では、1人の少女が彼等を待っていた。 彼女の名はサナ。病気の妹フィーナを助ける為に、 この谷の頂上に生えていると言われる薬草を採りに、この谷まで来たという。 シェイド達は疑問に感じながらも、少女を頂上へと連れて行く。 そしてその場には、薬草はどこにもなかった。 「バジル……お前っ!!」 ルイが剣を抜き、そのままバジルを睨みつける。 「くくく、久しぶりだな。ルイ・スティン。会いたかったぞ。」 バジルがどこからか姿を現し、ルイ達とは距離を置いた場所に身を移した。 「あの少女は、お前が利用したというのか? もしそうだとすると、妹がフィーナという名というのは嘘だな?」 「ああ。そうだ。フィーナってのは、俺があいつにそう言わせたのさ。 サナには妹なんかいないしな……くくく」 「サナの弱みを握ったのかっ!?」 「ん?そんな回りくどい事はしていないさ。ただ、こいつを利用しただけだ。 これが何だか、説明しなくても解るだろう?」 そう言うと、バジルは1つの光輝く石をルイ達に見せた。 「くっ……それは翡翠石……。子供を洗脳したっていうのかよ!!」 ユウが悔しそうにバジルを睨みつけた。 「子供を洗脳する事など簡単な事。あっさり言う事を聞いてくれたよ。 くくく……人を思い通りに動かす効果とは、この石は最高過ぎる代物だ。」 「……バジルっ!!」 「だがお前にしては効率の良い策を練ったな。それとも、別の誰かの差し金か?」 シェイドがバジルに問いただした。 「ふ、ご名答。おい、そろそろ出てこいよ」 「解りました」 そこに現れたのは、魔将軍のキリトだった。 彼は黒いマントを翻(ひるがえ)すと、ゆっくりとシェイド達の前に姿を現した。 「へへっ、そういえばキリト!お前は人を騙すのが得意だったな。 これは全て、お前の案だった訳か」 「ええ、そうですよ。ご無沙汰していましたね、ユウ将軍」 「魔将軍が2人揃ってわざわざおいでなすったか。 ……ひょっとして、俺達を待ち伏せていたのか? それなら、サナを洗脳して利用しなくても良かったんじゃねえのか?」 ユウがキリトに訪ね、その質問にキリトは丁寧に答えた。 「ふふ、決着をつけるのに、この場所は最適でしょう? もしこの場へ来る前に、翡翠石を見つけ出されて、 そそくさと此処から帰られては、全く意味がありませんからね。 万全を期す為に、あえてこのような回りくどい手順を取ったのですよ」 「あ、そう……心配性だな」 「もう貴方に逃げられるのが嫌なだけですよ」 「おいおい、毎回逃げていくのはそっちじゃねえかよ……」 ユウが呆れた顔で溜め息をついた。 確かにユウの言う事はもっともな事であった。 いつも何かしらの理由をつけて逃げていくのはキリトのほうだ。 「さて、準備も整った事だ。そろそろ始めようじゃないか。 殺し合いってやつをよ……くくく」 そう言うと、バジルがルイに手招きで挑発した。 ルイは何も答えず、ただ無言でバジルの後についてゆく。 「それでは、私達も始めましょうか。 ユウ将軍、どうぞあちらの広いスペースへ」 キリトはユウに一礼すると、指定した場所まで歩いていった。 「シェイドはサナを守っていてくれよな! なあに、心配は要らねえって!すぐに倒して戻ってくるぜっ!」 「心配などしていない。サナは私に任せて、早く行って戻ってこい」 「へへっ、了解っ!」 こうしてルイとバジル、そしてユウとキリトとの宿命の戦いが切って落とされた。 |