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第27話「龍谷の滝にて」


「あー……もうっ!なんなんだ、この高さはよぉっ!
 全っ然、酸素が足りねえっつーの!お前等、よく平気だなぁ……」
ユウが息苦しそうに、険しい谷道を歩きながらぼやきだした。
シェイド達は翡翠石を求めて、この龍谷の滝と呼ばれる険しい谷へと訪れていた。
この谷は、南クロス大陸の最南端に存在する。
「お前とは鍛え方が違う」
シェイドがユウの言葉を軽く交す。
「同意だ」
ルイもシェイドに続いた。
「……はいはい。化け物どもめ」
「見ろ、2人とも」
シェイドが前方を指した。
「ん?どうしたんだ?」
ルイとユウはシェイドの言われた方向に目を向けた。
そこには、1人の少女が立っていた。
「少女?……なんでこんな所に?」
「待て。魔物かもしれない」
ユウが少女に近づこうとしたが、シェイドが止めた。
「おっと、そうだな。人間の姿をした魔物なんて、珍しい事じゃなかったっけ」
ユウ達は一定の距離を保ち、おそるおそる少女に近づいた。
「こんなところで何をしているんだ?」
「…………」
少女はその質問には何も答えず、ただ黙ってユウの方を見ている。
「彼女、ユウの方ばかり見ているな。どうしてだ?」
不思議に思い、ルイがユウに質問した。
「さあな……一度も会った事なんてねえし。俺にも解らねえよ。
 なあ、お嬢ちゃん。名前は何ていうんだ?」
「……サナ」
「サナちゃん?……やっぱり聞いた事ねえ名前だ。
 それで、さっきも言ったけどさ、こんなところで何をしているんだ?」
しばらくしてからサナはその口を開いた。
「あのね。妹が病気になったの……それで、この谷に薬草があるから、
 それを採ってくれば治るって、お医者様が言ったからここまで来たんだけど……」
「馬鹿な……この谷に少女1人で来ただと?」
「魔物達に襲われなかった?……ありえない」
シェイドとルイはサナに何か言おうとしたが、
ユウとサナとの会話にはあえて関与せず、続けてサナの言葉を待った。
「この谷に生えているって?薬草がか?」
「うん……頂上に行けば生えているって言ってた」
サナは少し怯えながらも答えた。
「……どうする?シェイド、ルイ兄。連れて行ってやるか?」
「少女を此処に置いて行く訳にもいくまい」
「……だな。それじゃあ、サナちゃん。俺達と一緒に行こうか」
「う、うん!」

しばらく谷を登っていくと、頂上らしき景色が現れた。
辺りは何もなく、薬草どころか草一本生えてはいない。ただ滝が流れているぐらいだ。
この滝に一度落ちてしまうと、まず助からない高さであろう。
「此処が頂上みたいだな。空気が薄くて嫌になるぜ……動きが鈍い」
「薬草はなさそうだな。見たところ、我々が探している翡翠石も此処には無いようだ」
シェイドが辺りの様子を見て、冷静に判断した。
「なんでないの……このままじゃフィーナが助からないっ」
「なっ!?フィーナだと?お前の妹はフィーナという名前なのか」
ルイがサナの言葉に反応した。
「う、うん。そ、そうだよ……フィーナっていうの」
「くくく……やはりその名に反応したか。ルイ・スティン」
どこからか怪しい声が響いて聞こえる。
「その声はっ……!!」
その声を聞いた瞬間、ルイの顔が今まで以上に険しい表情になった。


第27話「龍谷の滝にて」終わり