「ようやくリュナン様の子孫が現れなさったか。 刻を越えて今、再び世界を救う為に英雄が立ち上がったってところだな」 北クロス王は長椅子に腰を掛け、長い白髭をさすりながら微笑んでいる。 シェイド、ルイ、ユウは既にこの城を離れ、龍谷の滝へと向かっている為、 ここには北クロス王、北クロス帝国四将軍達とジェラルドしか残っては居ない。 そこにレヴィンとザリアが合流したという訳だ。 「英雄と呼ばれる程、強くないんですけどね……俺」 「ほっほっほ、まあそう謙遜しなくてもよい。お主がリュナン様の子孫だという事は、 ジェラルドから聞いておるし、英雄の子孫なのだから強いのも当然ではないか」 「いや、子孫だからって強いとは……」 「おっほん!レヴィン、貴方は、とってもお強いですわ。 今まで一緒に行動してきた私が言うのですから、間違いありませんわ」 ザリアがレヴィンの言葉を遮って、北クロス王に説明した。 「ザリア……話し方がなんかおかしくないか?」 「レヴィン、ジェラルドおじさまの前で下手な事をしゃべったら、 後でどうなるか、勿論、解っているわよね?」 「あ……あ、ああ」 レヴィンにしか聞こえない小さな声で、ザリアがレヴィンを脅した。 それを見たジェラルドがザリアに問いただした。 「ザリア、どうした?何か相談事か?」 「あ、い……いいえ!何でもありませんわ!ほほほ」 「そ、そうか……」 謁見の間にある長いテーブルの上に敷かれている、白いテーブルクロスの上には、 紅茶と様々な種類の菓子が置かれ、此処に居る者達は一時の休息を楽しんだ。 これまでの長旅でほとんど食事をとっていなかったレヴィンとザリアにとっては、 紅茶と菓子が大層な御馳走に見えた。 「うわぁ……いい香り……」 ザリアは甘いモノに目がなく、なにより紅茶が大好きだった。 「遠慮無く食べてくれ」 王の言葉を機に、各将軍達やジェラルド、ザリア達は談話しながら食事を始めた。 「それでですねーレヴィンったら、本当に馬鹿なんですよー。 無の精霊に初めて会った時、"初めまして、俺はレヴィンです。貴方は誰ですか?" ……って聞いたんですよ!無の精霊に決まっていますわよね」 「はっはっは!お前らしいな、レヴィン!」 ジェラルドが高らかに笑う。 「初対面だと、どうしても緊張してしまうんですよね俺、はは……」 レヴィンは少し苦笑いをして、紅茶を一口飲んだ。 「そういえば、お前は今まで外に出なかったため、 見知らぬ人とあまり触れ合う機会がなかったんだったな。 初対面の相手と話す事が苦手だという、お前の気持ちも充分に解るさ」 「ジェラルドさん……」 ジェラルドの暖かい言葉に、レヴィンは嬉しくなった。 誰とでも優しく接してくれる、強くて尊敬されるような人、 このジェラルドのような偉大な人物になりたいと、誰もが思った。 それほど、ジェラルドの存在は大きなものであった。 「お前達には期待しているぞ。レヴィン、ザリア。 聖ヘレンズ国将軍と、北クロス国将軍、レモリア国将軍、そしてカイン。 これだけの勢力で攻めれば、必ず魔王軍を討つ事が出来るはずだ」 「はいっ!レヴィンがいれば大丈夫!ねえ?レヴィン!」 ザリアが拳を握りしめ、威勢よく立ち上がった。 「え?俺?……いや……俺は別にそれほど重要な役では……」 「こんなに私がテンション上がってんのに、 レヴィンのそのやる気の無さは何なんだっちゅーのっ!!」 「あ、元のザリアに戻った」 「あ……」 「はっはっはっはっは!」 ジェラルド達は、彼等のやりとりを楽しんでいた。 |