レヴィンとザリアの2人は、レモリア大陸を後にし、 ようやく北クロス大陸へと足を踏み入れた。 「この大陸まで来るのに、まさか此処まで時間がかかるなんてね。 なかなか計画通りにはいかないわね」 「仕方ないさ。でも寄り道をしたおかけで、 なんとか無の精霊とも契約を交す事が出来た訳だし、 これで良かったんじゃないか?」 「まあね。無の精霊"オーム"。彼がいれば、魔王にも対抗出来るはず! もし魔王を倒せば、レヴィンは立派な英雄ね!」 「いや……魔王って……俺、そんなに強くないし、 大体、初めから戦う気なんて、さらさら無いんだけどな。 ……って聞いてる?ザリア?」 「ああ、素敵ね、英雄の妻になれるだなんて……最高の待遇よ。ふふふ。 これは何としてでも、レヴィンには魔王を倒してもらわなくちゃ! でも私とレヴィンだけじゃ、まだ荷が重いから、もっと仲間を集めないと。 やっぱりパーティは最低でも4人は必要かもしれないわ。 仲間を揃えるには、やっぱり……酒場?うん、酒場よね。 そうと決まったら、酒場で強そうな剣士を見つけに行かないとね!」 「あー……自分の世界に入っちゃってるか……」 北クロス大陸にある北クロス国は剣士の国である。 これに対して南クロス大陸にある南クロス国は魔法の国として有名だが、 何故、剣士としての素質がないレヴィンをジェラルドが向わせたのかは、 サキのいる南クロス国が今回の黒幕であると既に知っていたからである。 「なんだ、お前達は?此処は一般人が訪れるような場所ではないぞ。 冷かしなら御免だ。さあ、帰った帰った」 北クロス城の門番にいきなり追い返されそうになったザリアだが、 門番の首根っこに掴みかかり、罵声を浴びせた。 「一体、誰に向かってそんな口を聞いてんのよっ! この人は、あのリュナン様の子孫よっ!さっさと王様に会わせなさいっ!」 「リ……リュナン様……だと!?う、嘘をつくなっ!!何か証拠でもあるのかっ! もし嘘だったとしたら、タダではおかんぞっ!!」 「証拠?……そ、そんなもの、ある訳ないじゃない」 「ほーら、思った通り、やっぱり嘘か。 俺達は忙しいんだよ。子供の戯言にいちいち付き合っている暇等ないんだ。 さあ、良い子だから、お家にお帰りなさ〜い、はははっ!」 「もー頭きたっ!!」 ザリアがこう切れてしまっては、レヴィンに止める事は出来ない。 兵士がボコボコに殴られている様子を、少し離れてただじっと見守っていた。 「どうした?騒々しいな。何かあったのか?」 騒ぎを聞きつけ、1人の威厳のある男が城から出てきた。 彼は元聖ヘレンズ国将軍のジェラルド・ヴァンスである。 元聖ヘレンズ国将軍カイン・ヴァンスの師匠であり、 またレヴィンやザリア達にとっても師匠と呼ぶべき、偉大なる存在だった。 「あ、ジェラルドさんっ!」 レヴィンが凄く嬉しそうにジェラルドを歓迎した。 ザリアを止められるのは、もはやこの人しかいないと思ったからである。 「おお、お前達。待っていたぞ」 「え?あ!ジェラルドおじさまっ!?」 ザリアがすぐに門番を突き放して、ジェラルドの元へ駆け寄った。 「え?あ?ジ……ジェラルド様のお知り合いの方でしたか! これはとんだご無礼を……ってイタタタッ……」 門番はザリアに殴られた箇所を手で押えながら、その場に座り込んた。 「はは、相変らず、そのお転婆は治っていないようだな」 「えへへ、そんな事ないですよぉ」 「ザリア……キャラが違う……」 レヴィンだけでなく、そこにいた誰もがそう思った。 |