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第24話「宿敵」


魔王城ヘルズ・キッチンでは、いよいよ魔将軍達が行動に出始めた。
今回、動いたのはルイに長年の恨みを持つバジルと、あと1人。
聖ヘレンズ城にてユウとの戦いを中断してしまったキリトである。
彼等はお互いに、それぞれの宿敵との決着をつける為、魔王城を出た。

――――2時間前―――

「ヴェイク様、北クロス城へ攻め入る前にやり残した事があります。
 しばらく私に時間をお与え下さい」
キリトがヴェイクの前に伏せ、頼み込んだ。
「解っている。奴との決着だな?」
「はい。彼とは聖ヘレンズとの戦いで宿敵だと確信しました。
 どうしてもこの手で倒したい。そう思っています。
 今、私が動かなくても、いずれは相まみえる事になるでしょうが、
 ……どうしても、今、私のこの気持ちが高まっている間に、
 彼との決着をつけたいのです。」
ヴェイクは少し何か考えるように下をうつむき、結論が出ると、キリトに答えた。
「キリト、お前の気持ちが解らんでもないが、もし万が一にでもだ、
 この戦いでお前を失う訳にはいかんのだ。解るだろう?
 お前が倒される事はないと信じてはいるが、な」
「はい……解っています。済みません」
「だが、行ってこい。そして必ず奴を仕留めてくるんだ。出来るな?」
「ありがとうございます。ヴェイク様」
「おっと、ヴェイク様、俺にもどうしても許せない奴が1人いるんですが、
 勿論、行かせてもらっても構いませんよね?」
すかさず後ろで待機していたバジルがヴェイクに頼み込む。
「ルイ・スティンか……」
「はい」
「あいつは強いぞ。お前に仕留めきれるか?」
「くくく……今度こそ、息の根を止めてみせます」
「ふっ、いいだろう。行ってこい」
「ありがとうございます。ヴェイク様」
バジルとキリトが振り返った瞬間、扉が開けられ、
ヴェイク親衛隊が瀕死状態で、ヴェイクの元へと駆け寄った。
「ヴェ……ヴェイ……」
意志を伝える前に、そのまま息を引き取ってしまった。
「この傷跡は……」
傷ついた親衛隊の体には、大きな十字架の切傷が刻まれていた。
まるで巨大な剣か斧かで斬られたかのようである。
「これは酷い……誰がこのような事を……」
ソフィアは無惨な姿になった親衛隊から顔を背けた。
「つまり、今この城へ誰か侵入しているとでもいうのかしらね?」
サキが冷静に質問した。
「解らん……この城へ攻め入る事の出来る者等、そうはいないはず。
 ……まさか、カイン・ヴァンスの仕業か?」
一度はこの城へ攻められた過去があるだけに、
カインの存在はヴェイクの中で"巨大なもの"となっていた。
あの時は実力に差があったが、今はどうであろうか。
まだ自分は完全に魔王の体を手に入れていない。
ガイアの壺によって手に入れたのは、魔王の魂だけ。
媒体であるヴェイク将軍の体では、魔王の力を完全には発揮出来ない。
それだけが、今のヴェイクにとっての不安な要素でもあったのだ。

「貴様の親衛隊とやらも頼りにならんな。弱いにも程がある……」
突然、黒髪の男が扉の前に姿を見せた。
彼はゆっくりと、ヴェイク達の元へと歩み寄った。
「クレハか……」
ヴェイクは不敵な笑みを浮べながら、その名を呟いた。


第24話「宿敵」終わり