「無の精霊とは、4精霊をまとめるさらに上の精霊じゃな。 村でいうところの長老的な存在といえば解りやすいかの? つまり、このワシのようにな……ほっほっほ。 あ、ちなみにワシの名前はフォルスじゃ。宜しくな」 「あんたの名前はどうでもいいけど、あんた長老だったのね。 それよりも無の精霊かぁ。なんだか強そうな感じね。 ……ねえレヴィン、その精霊は召喚出来ないの?」 「無の精霊?俺が召喚出来るのは4精霊だけだよ」 「そっかぁ……つまらないわ」 ザリアは少しがっかりして、その場に座り込んだ。 「召喚出来ないなら、契約を交せばいいだけじゃよ。 その為に、ティナという方はお主を此処まで来させたのじゃろう」 「え?」 「じゃあティナさん達って、レヴィンがリュナン様の子孫だって事も、 無の精霊の事も知っていたっていう事なの?」 「知っていなければ、この場所の存在など教えはせんよ。 此処は隠された聖域であるからのぉ……」 「1人しか居ないクセに何が聖域よ……」 ぼそっと老人には聞こえないようにザリアは呟いた。 「それで、どうやったらその"無の精霊"ってのに会えるの?」 「ほれ、そこに地下へと続く穴があるじゃろう?」 「え?どこ?……こっち?」 「違う違う、そっちじゃない。あそこじゃよ」 「あ、ああ、あそこね。薄暗いから解らなかったわ」 ザリアは老人が指し示した場所へ歩いていった。 そこには人が入れる穴があり、梯子がかけてあった。 中は暗く、明りを灯さないと何も見えない。 ザリアは穴を覗き込んで何も見えない事を確認すると、老人に質問した。 「この穴はどこへ続いているの?」 「この先は空洞になっておってな。奥まで1本道なので迷う事もないじゃろう。 無の精霊は、突き当たりにおるはずじゃ」 「"はず"って……確実に居るんじゃないの?」 「今もまだ生きているかどうかは解らんからのぉ」 「精霊って……死ぬの?」 「さあ……」 「随分と適当ね……」 ザリアは呆れながら、レヴィンの方へ近寄った。 「レヴィン、降りていくわよ。さっさとこっちへ来て」 「あー……だけど面倒だな。あのさザリア。 俺、別に無の精霊なんか喚べなくてもいいんだけど……」 レヴィンはいつものように、全くやる気が感じられない。 そんなレヴィンを見て、ザリアがとる行動はいつも同じである。 「はあ?……何言ってんの。 無の精霊と契約しないと、此処まで来た意味がないじゃない。 グダグダ言ってないで、さっさと奥まで行くわよっ! ほら、レヴィンから先に降りなさい!さあ、早く!」 そう言いながらレヴィンの背中を押し、穴の中へと誘導した。 「うわあっ……押すなって!落ちるだろっ!!」 レヴィンの意志も虚しく、ザリアによって強引に地下へと降りる事になった。 |