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第21話「無の精霊〜中編〜」


ガイア世界においては、火、水、光、闇の4属性それぞれに精霊が存在する。
火を司る精霊イフリート、水を司る精霊ノア、光を司る精霊コスモス、闇を司る精霊カオスである。
精霊は精霊術士が契約を交さなければ召喚する事は出来ない。
また精霊術士以外の者が契約を交そうとすると、精霊達の怒りを買い、呪われてしまう。
かつて精霊を召喚しようとした、今はもう滅びてしまった"とある国"の王がいた。
彼は精霊を我が手中にしようとしたが、精霊の怒りに触れ、一生歩けない醜い姿へと変貌させられた。

「なんで精霊術士でもないレヴィンが精霊を召喚出来たんでしょうね」
「さあ……」
確かにレヴィンは精霊術士ではない。
では何故、彼は精霊と契約を交す事が出来たのだろうか。
それは、本人ですら解らない事であった。
「精霊と契約する際に、何も言われなかったのか?」
老人が不思議に思いながらもレヴィンに質問した。
「んー……何も言われなかったも何も。契約なんてした事ないし……」
「はい?」
「なんじゃと!?契約をした事がない?4精霊を召喚出来るのに、1度もか?」
「ああ、契約なんて交した事ないよ」
「信じられん。お主は一体、何者なんじゃ……」
「リュナン様の子孫って事ぐらいしか……」
「なっ……なんじゃと!?今、何と言った!?」
「え?だから、リュナン様の子孫だって……」
老人は目を大きく見開いて、レヴィンの顔をまじまじと見つめた。
「な、なんだよ、そんなにジロジロ見ないでくれよ……」
「ふうむ……なんという事だ。リュナン様の血筋の者がこんな所に居たとはな。
 道理でな。精霊が契約無しで召喚出来るというのも納得がいく」
「え?どういう事?実はレヴィンは精霊術士だったっていうんじゃないでしょうね?」
老人はその場を立つと、杖をつきながら、何も言わずゆっくりと正面の穴の方へ行った。
穴へ入ってから数分して、一枚の書物を抱え、ザリア達の前に持ってきた。
それはガイア世界における精霊について、事細かく記された古代の書物であった。
その書物によると、精霊との契約に関しては次のように書いていた。
「精霊との契約において、精霊術士以外の者が契約を交そうとすると、
 精霊達の怒りに触れ、呪いがかかる」
「うんうん、ここはさっき話してくれた事と同じね」
「うむ。そして問題はその次じゃ。読んでくれ」
老人はザリアにその書物を手渡した。
「なになに……えーと次の文章は……って、こんな古代文字、読めるかっちゅーの!!」
「ザリア、ストーップ!!」
老人を殴ろうとするザリアを、レヴィンが慌てて制止した。
「ごほん……えーと。次の文は、このように書かれておる。
 "ただし例外として、パーズの者を除く"とな」
「パーズ?」
「パーズとは、我々精霊術士の言葉で"英雄"を表わす。
 リュナン様がかつての魔王ガルドゥーンを倒した1人である事は、当然知っておるじゃろう?」
「勿論ね」
「精霊達の望みは、自然界の均衡を保つ事。それには魔族や魔物は邪魔な存在でしかない。
 そこで、魔王を倒した彼ならば、精霊を上手く扱ってくれると、判断を下したのじゃろうな」
「精霊達は人間の味方って事?」
「今はな。もしこの先魔族が滅び、人間達同士の争いが悪化する事になれば、
 今度は我々人間に敵対するようになるじゃろう」
「そうなったら怖いわね。
 それで、レヴィンが契約無しで精霊を召喚出来るのも、
 全てはその……パーズっていうのが関係しているって事よね?
 リュナン様がパーズに価する人物だから、その子孫のレヴィンもパーズって事?」
「たぶんな。それ以外に考えられん」
「子孫っていうだけで召喚出来るなんて、随分ラッキーね。レヴィン」
「んー……これってラッキーなのか?色々と大変なんだぞ。
 精霊達に一日中監視されているみたいでさ……」
「監視……そう考えると嫌かも……はは」
「だろ?」
レヴィンは溜め息をついて、うなだれた。
「それで、肝心の"無の精霊"についてはどうなったのよ」
「おお、これは済まん。すっかり忘れておったわい」



第21話「無の精霊〜中編〜」終わり