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第17話「悪女の真意」


―魔王城ヘルズ・キッチン―

「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」
「おいおい、どうしたソフィア?貴様がそんな焦りをみせるとは……。
 なかなか色っぽい表情じゃないか……くくく」
「…………」
「おいおい、そう睨むなって。これでも褒めているんだぞ?」
「ヴェイク様、ご報告いたします」
バジルの冷かしには構わず、息を切らしながら魔王の傍へと歩み寄った。
「話してみろ、ソフィア」
「実は……」
ソフィアは真剣な表情で、事細かくヴェイクに状況を説明した。

「……っ!!なんだと!?」
「事実です」
辺りが静まりかえる。
バジルとキリト、サキの3人は、ヴェイクの言葉を待った。
ヴェイクはサキの方を向き、その口を開いた。
「サキ、お前にとっては悪い知らせだ」
「……なにかしら?」
「バルテスが討たれたそうだ」
「…………」
サキは無言で下をうつむいている。
「なっ!あの狂人がっ!?馬鹿なっ……」
バジルが信じられないといった顔でキリトのほうを見た。
「我々でも驚異的な存在であった彼が討たれるとは……いったい、誰が彼を?」
キリトは恐る恐るヴェイクに訪ねた。

魔王軍側にとって、バルテスの敗北は予想外の出来事である。
それほど、彼等はバルテスの力を驚異とし、恐れていた。
その"驚異"を超える存在が現れたという事実は、彼等に不安と焦りをもたらした。

「"オリオンの翼"と呼ばれるハンターチーム、だそうだ。この名に聞き覚えはあるか?」
「オリオンの翼……!?まさか……カイン……?」
キリトがバジルの方を向き、同意を求める。
「ああ、間違いないな。あの野郎の仕業かっ……」
「ほう……カインだと?奴はハンターに転身したのか?」
「ええ、そのようです」
「それは興味深い」
ヴェイクは含み笑いをしながら、傍に置いてあった赤ワインを口にした。
「バルテス様をも超える実力をつけたというの?あの坊やが」
サキがキリトに質問した。
「……認めたくはありませんけどね」
「ところでサキ。バルテスが死んだ今、お前の目的もなくなったのではないか?
 もはや、この城に留まる意味はないだろう?」
ヴェイクがサキに問いただした。
「…………」
「魔将軍を抜け、この城を出て行くか?」
「……ふふ、まさか」
「なに?」
「勿論、魔将軍の地位から降りるつもりなんてないわ」
「では、このままこの城に残り、我々と行動を共にする。
 つまり、改めて我々の仲間になるとでも?」
「そうとってもらって構わないわよ」
「……解った」
「宜しくね、皆さん」
「ちっ……気に入らないな」
バジルは不機嫌な顔をして、サキのほうから目を背けた。

「意外なところでバルテスが死んだわね……。
 ふふふ、少し予定が狂ったけど、結果的には何も問題ないわ」
サキが独り言のように呟いた。


第17話「悪女の真意」終わり