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第16話「救世主」


「へへっ!おっとぉっ!そんな攻撃じゃあ、俺を捕える事は出来ねえぜっ!」
ユウがバルテスの部下による剣撃を軽々と避ける。
「燃えやがれっ!そらっ!こいつは"オマケ"だっ!!」
紅蓮の炎が彼らを包み込む。
「ぐっ……なんなんだこいつ等の力はっ!!」
「ちいっ!撤退だ!命がいくつあっても足りねえっ!!」
1人、また1人と、撤退する者が増え続ける。
まだ戦っていない者たちも、その光景を見て後ずさりを始めている。
「悪いが、相手不足だ……」
ルイの鋭い閃光が頑丈そうな鎧を斬り裂いた。

ユウたちが戦い始めてから約10分後。
20人ほどいたバルテスの部下たちは全員、瞬く間にその場を離れた。
聖ヘレンズ帝国の将軍たちが相手では、流石に実力に差がありすぎるようだ。
「バ……バルテス様……奴等、化け物ですぜっ!!」
「バッキャロー!!怖じ気づいてどうするんだ!
 お前等が雑魚すぎるんだよ、この"ぷにょん野郎"がっ!!」
「す……すみません!でも俺は逃げさせてもらいます!!」
そう言い残し、最後の部下も逃げ出してしまった。
「ええい!最初からお前等なんぞアテにしとらんわっ!
 完全にミス・テイク!ここはワシ1人で十分じゃっ!」
バルテスは腰に下げていた刀を抜き、前へゆっくりと歩いていった。
「ヘイヘイヘーイ!ご無沙汰だな、シェイドさんよぉっ!」
「……ふん」
シェイドが溜め息を漏らす。
「カインの坊やは元気かい?あん?」
「……さあな」
「おやおやおや、随分と冷たいじゃねえかぁ!
 こいつは参ったな!嫌われちまったぜベイベー!ヒャッホウ!」
「いいから、かかってこい」
シェイドが剣を構えた。
「この世界はグルグル、グルグル回ってんのさ!!」
バルテスは回転しながら上空へ飛び、そのまま急降下し、
シェイドの喉元をめがけて刀を突きつけた。
「羅刹っ!!」

―――――ズゴオオォォォン―――――

爆音が辺りに響き渡る。
「ほう……避けたか」
ニヤリと不敵な笑みをこぼしながら、次の攻撃に備えた。
「ユウ、ルイ、頼んだぞ」
シェイドはバルテスの後ろで剣を構えている2人に、目で合図した。
「へっ、了解だっ!」
「……ああ、解った」
気を感じ取ったのか、バルテスは後ろを振り向く。
「お前等、何をしようってんだ?
 どんな攻撃も、このワシには効かんぞぉっ!!」
「へっ……そいつはどうかな!!いくぜルイ兄っ!!」
ユウとルイはお互いに距離を詰め、素早い動きでバルテスを交互に斬りつけた。
「んんっ?なんだなんだ?」
2人の連携技"クロス・ゲート"がバルテスに襲いかかる。
「ほほう……2人がかりとは結構、いい攻撃じゃねえの……だが残念だっ!
 このワシにダメージは無いに等しいっ!はっはっはーっ!」
バルテスはユウとルイ、2人の剣を大刀で受け止めた。
「それは、あくまで足止めに過ぎん!はあっ!!」
「ぐおっ!!」
シェイドの強烈な一撃が、バルテスの腹部に当たった。
「て……てめえっ……!!痛えじゃねぇかぁぁぁぁっ!!
 つあああああああっ!!おりゃゃゃあっ!!」
「なっ!?」
「ぐあっ!」
奇声を発しながら、ユウとルイを1本の刀で同時に吹き飛ばした。
「くっ、あいつ……何て馬鹿力なんだよ……俺たちを吹き飛ばすなんて」
「ふ、まさに狂人……だな」
バルテスは怒り狂いながら、シェイドを睨んだ。
「シェイドさんよおっ!このお返しは高ーくつくぜっ!!
 このバルテス様最大の奥義からは逃がれらりるれろっ!!」
噛みながらも、全く気にせず刀を構える。
「この世界はなぁっ!!グルグル、グルグル回ってんのさ!!
 死にやがれっ!!奥義・邪無づ……!!」
「月光!!」

―――――ズゴオオォォォン―――――

バルテスの奥義が炸裂する直前に、何者かの強烈な一撃が彼を襲った。
それはあまりの一瞬の出来事で、さすがのバルテスでも避けることは出来なかった。
「て……てめ……え……誰……だ……」
流血しながらも、狂人は相手の顔を見ようとした。
狂人の目の前には、3人の姿があった。
その姿を見て、シェイド、ルイ、ユウたちも驚いている。
「て、てめえは……っ!今頃ノコノコ現れやがって!!
 ……全員ぶっ殺してやる!!皆殺し決定だあぁぁぁっ!!」
致命的な一撃を受けたバルテスの怒りは、よりいっそう膨れあがる。
シェイドは彼らの元へ近づき、1人の青髪の男に話しかけた。
「……この剣を返す時が来たようだな」
そう言いながら、自分の持っている聖剣ファルコンを差し出した。


第16話「救世主」終わり