「へへっ!おっとぉっ!そんな攻撃じゃあ、俺を捕える事は出来ねえぜっ!」 ユウがバルテスの部下による剣撃を軽々と避ける。 「燃えやがれっ!そらっ!こいつは"オマケ"だっ!!」 紅蓮の炎が彼らを包み込む。 「ぐっ……なんなんだこいつ等の力はっ!!」 「ちいっ!撤退だ!命がいくつあっても足りねえっ!!」 1人、また1人と、撤退する者が増え続ける。 まだ戦っていない者たちも、その光景を見て後ずさりを始めている。 「悪いが、相手不足だ……」 ルイの鋭い閃光が頑丈そうな鎧を斬り裂いた。 ユウたちが戦い始めてから約10分後。 20人ほどいたバルテスの部下たちは全員、瞬く間にその場を離れた。 聖ヘレンズ帝国の将軍たちが相手では、流石に実力に差がありすぎるようだ。 「バ……バルテス様……奴等、化け物ですぜっ!!」 「バッキャロー!!怖じ気づいてどうするんだ! お前等が雑魚すぎるんだよ、この"ぷにょん野郎"がっ!!」 「す……すみません!でも俺は逃げさせてもらいます!!」 そう言い残し、最後の部下も逃げ出してしまった。 「ええい!最初からお前等なんぞアテにしとらんわっ! 完全にミス・テイク!ここはワシ1人で十分じゃっ!」 バルテスは腰に下げていた刀を抜き、前へゆっくりと歩いていった。 「ヘイヘイヘーイ!ご無沙汰だな、シェイドさんよぉっ!」 「……ふん」 シェイドが溜め息を漏らす。 「カインの坊やは元気かい?あん?」 「……さあな」 「おやおやおや、随分と冷たいじゃねえかぁ! こいつは参ったな!嫌われちまったぜベイベー!ヒャッホウ!」 「いいから、かかってこい」 シェイドが剣を構えた。 「この世界はグルグル、グルグル回ってんのさ!!」 バルテスは回転しながら上空へ飛び、そのまま急降下し、 シェイドの喉元をめがけて刀を突きつけた。 「羅刹っ!!」 ―――――ズゴオオォォォン――――― 爆音が辺りに響き渡る。 「ほう……避けたか」 ニヤリと不敵な笑みをこぼしながら、次の攻撃に備えた。 「ユウ、ルイ、頼んだぞ」 シェイドはバルテスの後ろで剣を構えている2人に、目で合図した。 「へっ、了解だっ!」 「……ああ、解った」 気を感じ取ったのか、バルテスは後ろを振り向く。 「お前等、何をしようってんだ? どんな攻撃も、このワシには効かんぞぉっ!!」 「へっ……そいつはどうかな!!いくぜルイ兄っ!!」 ユウとルイはお互いに距離を詰め、素早い動きでバルテスを交互に斬りつけた。 「んんっ?なんだなんだ?」 2人の連携技"クロス・ゲート"がバルテスに襲いかかる。 「ほほう……2人がかりとは結構、いい攻撃じゃねえの……だが残念だっ! このワシにダメージは無いに等しいっ!はっはっはーっ!」 バルテスはユウとルイ、2人の剣を大刀で受け止めた。 「それは、あくまで足止めに過ぎん!はあっ!!」 「ぐおっ!!」 シェイドの強烈な一撃が、バルテスの腹部に当たった。 「て……てめえっ……!!痛えじゃねぇかぁぁぁぁっ!! つあああああああっ!!おりゃゃゃあっ!!」 「なっ!?」 「ぐあっ!」 奇声を発しながら、ユウとルイを1本の刀で同時に吹き飛ばした。 「くっ、あいつ……何て馬鹿力なんだよ……俺たちを吹き飛ばすなんて」 「ふ、まさに狂人……だな」 バルテスは怒り狂いながら、シェイドを睨んだ。 「シェイドさんよおっ!このお返しは高ーくつくぜっ!! このバルテス様最大の奥義からは逃がれらりるれろっ!!」 噛みながらも、全く気にせず刀を構える。 「この世界はなぁっ!!グルグル、グルグル回ってんのさ!! 死にやがれっ!!奥義・邪無づ……!!」 「月光!!」 ―――――ズゴオオォォォン――――― バルテスの奥義が炸裂する直前に、何者かの強烈な一撃が彼を襲った。 それはあまりの一瞬の出来事で、さすがのバルテスでも避けることは出来なかった。 「て……てめ……え……誰……だ……」 流血しながらも、狂人は相手の顔を見ようとした。 狂人の目の前には、3人の姿があった。 その姿を見て、シェイド、ルイ、ユウたちも驚いている。 「て、てめえは……っ!今頃ノコノコ現れやがって!! ……全員ぶっ殺してやる!!皆殺し決定だあぁぁぁっ!!」 致命的な一撃を受けたバルテスの怒りは、よりいっそう膨れあがる。 シェイドは彼らの元へ近づき、1人の青髪の男に話しかけた。 「……この剣を返す時が来たようだな」 そう言いながら、自分の持っている聖剣ファルコンを差し出した。 |