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第15話「奇襲」


「おいおい……精霊の力を借りるったって、精霊術士が必要じゃねぇか……。
 そんなに簡単に見つかるものなのかい?」
ユウが王に質問した。
「レモリア大陸に行けば、数少ないがいる事はいる。
 ……が、実力のある精霊術士を捜すとなると、容易ではないが」
「フリージアが生きていればな……イフリートの力で」
「ユウ、それは言わない約束だ」
ルイがユウを止めた。
「あ、あぁ……すまねぇ」
「ではクロス王、我々の役目は精霊術士を捜す事でしょうか?」
今度はシェイドが王に質問した。
「うむ、頼んだ。こちらはその間、準備を進めておくとしよう」
「準備とは?」
「おそらくは近々、魔王軍が攻めてくるからな。
 それまでに実力のある兵士達を此処へ集結させなければならん」
シェイド、ユウ、ルイの3人は、驚きを隠せない表情で王を見た。
「魔王軍が攻めてくる?……何故此処に?」
「それに関しては、俺が説明しよう」
クロス帝国四大将軍の一人、シンが口を開いた。
シンは赤い髪をした長身の男で、歳は25〜30歳ぐらいに見てとれた。
腰にはシェイドのドラゴンズ・アイに匹敵する程の、大きな剣を下げている。

「魔王が攻めてくる理由。それはこれが原因だ」
そう言うと、彼は傍に飾っていた小さな箱から2つの石を取り出し、
それをシェイド達に見せた。
「ん?それって、翡翠石じゃねぇか?」
ユウが答えた。
「この石を知っているとは、流石は聖ヘレンズ帝国の将軍だ」
「へへ、そりゃどーも。まぁ、その石が何なのかってとこまでは知らねぇけどな。
 ああ……そういえば、"サキ"って奴がその石を探してたっけな」
「なっ!?サキ?……まさかサキ・シャーディか!?
 お前、いったい奴とどこで知り合ったんだ?」
「ん?どうしたんだ?急に血相を変えて……」
突然、シンは慌てた様子でユウに問いただした。
「サキ?誰だ?」
ルイがユウに聞いた。
「えーと、説明すると話は長くなるんだが……まぁ手短かに言うとだな。
 船が海王ポセイデュスっていう化け物に大破されちまってな。
 んで、俺とフリージアはそのまま砂漠の地方に流れ着いたってわけ」
その場にいた全員がユウの話に傾けた。
「そこで偶然、知り合ったのがサキ・シャーディっていう女だ。
 なんでもサンドワームっていう化け物が持っている翡翠石を探しているらしくってな。
 俺達も丁度その石が必要だったから、一時的に仲間になってもらったんだよ」
しばらく沈黙が続く。
「あのー……サキが何か問題でも?」
周りのひんやりとした空気に、ユウは戸惑った。
サキの事を知らないシェイドとルイは、不思議そうに彼等を見ている。

「翡翠石はこの世に全部で8つしか存在しません。
 おそらく、サキの手にしていた物が本物の翡翠石でしょうね」
しばらくして、シンと同じクロス帝国四大将軍の一人、パールが口を開いた。
パールという茶髪の青年はまだ若く、歳は16〜17歳ぐらい。
彼はまだこの城の兵士になったばかりであったが、
剣術においてどの上級兵よりも群を抜いていた為、半年足らずで将軍の位へと昇格した。
才能のある者は年齢関係なく昇格させる。これがこの城の方針だった。
その点では、聖ヘレンズ帝国も同等だといえる。

「……って事は、俺があのおっさんに渡したものは偽物だったって訳か。
 うーん、なんだか悪い事をしたなぁ。でも本物だって信じてたから、まぁいいかな、うん」
ユウは自分の良いように解釈し、あっさりと開き直った。
常にプラス思考なのはユウの性格である。
時にはそれが仇ともなるが、そんな事は一切気にしないのも彼の性格だ。
「サキ・シャーディという女、そして翡翠石とは何だ?説明して頂こう」
まだ現状を飲み込めていないシェイドは、シンに質問した。

「た……大変です!バルテスが!!バルテス・アルードがこの城に攻めてきましたっ!!
 城門にて上級兵達が応戦していますが、あの刀の前に苦戦中です!!」
突然、王の間の扉が開かれ、一人の兵士が駆け込んだ。
「狂人がか?ふ、予想していたよりも早かったな……」
クロス王が顎髭を撫でながら微笑した。
「数は?」
「20人前後です!!」
「奴の狙いは、その2つの翡翠石ですか?」
シェイドが王に問う。
「うむ、そうだ。奴もあの石を欲しておるからな。
 ……では、こちらもそろそろあの狂人を食い止めておくか。
 いつまでも暴れさせておく訳にはいかん」
「クロス王、ここは私が」
「済まんな。では、そうしてくれるか。貴公が相手すれば、早く片がつく」
「解かりました。いくぞ、ユウ、ルイ」
「へいへい、解っかりましたっと!」
「了解」
ユウとルイは剣を抜き、城門へと向かった。


第15話「奇襲」終わり