「おいおい……精霊の力を借りるったって、精霊術士が必要じゃねぇか……。 そんなに簡単に見つかるものなのかい?」 ユウが王に質問した。 「レモリア大陸に行けば、数少ないがいる事はいる。 ……が、実力のある精霊術士を捜すとなると、容易ではないが」 「フリージアが生きていればな……イフリートの力で」 「ユウ、それは言わない約束だ」 ルイがユウを止めた。 「あ、あぁ……すまねぇ」 「ではクロス王、我々の役目は精霊術士を捜す事でしょうか?」 今度はシェイドが王に質問した。 「うむ、頼んだ。こちらはその間、準備を進めておくとしよう」 「準備とは?」 「おそらくは近々、魔王軍が攻めてくるからな。 それまでに実力のある兵士達を此処へ集結させなければならん」 シェイド、ユウ、ルイの3人は、驚きを隠せない表情で王を見た。 「魔王軍が攻めてくる?……何故此処に?」 「それに関しては、俺が説明しよう」 クロス帝国四大将軍の一人、シンが口を開いた。 シンは赤い髪をした長身の男で、歳は25〜30歳ぐらいに見てとれた。 腰にはシェイドのドラゴンズ・アイに匹敵する程の、大きな剣を下げている。 「魔王が攻めてくる理由。それはこれが原因だ」 そう言うと、彼は傍に飾っていた小さな箱から2つの石を取り出し、 それをシェイド達に見せた。 「ん?それって、翡翠石じゃねぇか?」 ユウが答えた。 「この石を知っているとは、流石は聖ヘレンズ帝国の将軍だ」 「へへ、そりゃどーも。まぁ、その石が何なのかってとこまでは知らねぇけどな。 ああ……そういえば、"サキ"って奴がその石を探してたっけな」 「なっ!?サキ?……まさかサキ・シャーディか!? お前、いったい奴とどこで知り合ったんだ?」 「ん?どうしたんだ?急に血相を変えて……」 突然、シンは慌てた様子でユウに問いただした。 「サキ?誰だ?」 ルイがユウに聞いた。 「えーと、説明すると話は長くなるんだが……まぁ手短かに言うとだな。 船が海王ポセイデュスっていう化け物に大破されちまってな。 んで、俺とフリージアはそのまま砂漠の地方に流れ着いたってわけ」 その場にいた全員がユウの話に傾けた。 「そこで偶然、知り合ったのがサキ・シャーディっていう女だ。 なんでもサンドワームっていう化け物が持っている翡翠石を探しているらしくってな。 俺達も丁度その石が必要だったから、一時的に仲間になってもらったんだよ」 しばらく沈黙が続く。 「あのー……サキが何か問題でも?」 周りのひんやりとした空気に、ユウは戸惑った。 サキの事を知らないシェイドとルイは、不思議そうに彼等を見ている。 「翡翠石はこの世に全部で8つしか存在しません。 おそらく、サキの手にしていた物が本物の翡翠石でしょうね」 しばらくして、シンと同じクロス帝国四大将軍の一人、パールが口を開いた。 パールという茶髪の青年はまだ若く、歳は16〜17歳ぐらい。 彼はまだこの城の兵士になったばかりであったが、 剣術においてどの上級兵よりも群を抜いていた為、半年足らずで将軍の位へと昇格した。 才能のある者は年齢関係なく昇格させる。これがこの城の方針だった。 その点では、聖ヘレンズ帝国も同等だといえる。 「……って事は、俺があのおっさんに渡したものは偽物だったって訳か。 うーん、なんだか悪い事をしたなぁ。でも本物だって信じてたから、まぁいいかな、うん」 ユウは自分の良いように解釈し、あっさりと開き直った。 常にプラス思考なのはユウの性格である。 時にはそれが仇ともなるが、そんな事は一切気にしないのも彼の性格だ。 「サキ・シャーディという女、そして翡翠石とは何だ?説明して頂こう」 まだ現状を飲み込めていないシェイドは、シンに質問した。 「た……大変です!バルテスが!!バルテス・アルードがこの城に攻めてきましたっ!! 城門にて上級兵達が応戦していますが、あの刀の前に苦戦中です!!」 突然、王の間の扉が開かれ、一人の兵士が駆け込んだ。 「狂人がか?ふ、予想していたよりも早かったな……」 クロス王が顎髭を撫でながら微笑した。 「数は?」 「20人前後です!!」 「奴の狙いは、その2つの翡翠石ですか?」 シェイドが王に問う。 「うむ、そうだ。奴もあの石を欲しておるからな。 ……では、こちらもそろそろあの狂人を食い止めておくか。 いつまでも暴れさせておく訳にはいかん」 「クロス王、ここは私が」 「済まんな。では、そうしてくれるか。貴公が相手すれば、早く片がつく」 「解かりました。いくぞ、ユウ、ルイ」 「へいへい、解っかりましたっと!」 「了解」 ユウとルイは剣を抜き、城門へと向かった。 |