「……って訳で、シェイド王と将軍様達は、クロス大陸に向かったからな」 バンダナを巻いている金髪の青年バンガードは、レヴィンにそう伝えた。 「いや……向かったからなって突然言われてもなぁ。俺達と、一体どう関係が?」 レヴィンは困惑した表情で返事をした。 バンガードに続いて、彼の隣にいた女性、ティナが口を開いた。 「シェイド王からの伝言です。 それが何を意味するのかは解かりませんけど……」 「どっちみちクロス大陸に行く予定だったし、まぁ結果的には良いんだけどね。 でも、どうしてシェイド様が私達の事を知っているのかな……。 ねぇ、レヴィン。貴方は不思議に思わない?」 ザリアはレヴィンに同意を求めた。 「うーん……。別に、どうでもいいかも」 「レヴィンって、ほんと物事に対して全く関心がないわね」 「いいじゃんか……別に」 「まぁ、良いわ。どうせジェラルドさんの仕業だって事は解ってるけどね。 あの人の事だもの。何か企んでいるに違いないわ、うん」 ザリアは一人だけ納得したかのように、うんうんと頷いた。 「とにかく、俺達の用件はそれだけだ。頑張ってクロス大陸まで行ってくれよな」 シオン、ティナ、バンガードの3人はそう言い残し、レヴィン達の元を離れた。 「シェイド王の元へ行け……か。厄介事に巻き込まれなきゃいいけど」 「大丈夫よ!ジェラルドさんの考えに間違いはないわ。 さぁ、そうと解かったらすぐに此処を離れましょう。この森に用はないからね」 「了解」 ―――――南クロス城――――― 王室では、一人の美しい女性がウロウロと行ったり来たりを繰り返していた。 この女性の名は"ジェシカ・G・マンダム"という。 国王の娘であり地位的には"姫"でもあるが、本人からの強い希望で、 現在は魔法師団"ジョゼーヌ"の統率者(リーダー)を努めている。 「遅い……遅いわ……!全くもってフリーダム・ゴッデス!! イライラパワー全快120%限界突破記念おめでとう、よ!!」 狂人バルテス同等の意味不明な言動だが、彼女は別に呪われている訳ではない。 これが彼女の"素"である。 だが魔法の分野に関しては、名実共に帝国一を誇っている。 彼女には弟がいて、名を"トレビアン"というが、彼の口調はこの姉が原因らしい。 幼き頃より姉の真似事をしているうちに、 あのような女口調、そして意味不明な言動が身に付いてしまった。 まぁ、つまり俗に言う"オカマ"と呼ばれる存在になった訳である。 その彼も、聖ヘレンズ城での戦いの場でその命を落とした。 ここでの彼の説明はこれぐらいでいいとして、姉の話に戻ろう。 ジョゼーヌは、"ある男"を待っていた。 約束の時間に来なかった為、少しイライラしている訳である。 「あーもう!遅っそいわね!34秒遅刻よぉっ!!ほら見て、35秒過ぎた!! 36、37、38……むきーっ!!ビューティフル・ロマンス!ミラクル!」 だだっ広い王室で、なにやら一人叫んでいる。 それから約5分後、"男"は現れた。 男は黒いマントを羽織り、また黒いシルクハットのような帽子をかぶっていた。 そう、全身黒ずくめである。 「くくく……相変わらずの奇声っぷりだな」 男は冷やかな眼差しで笑いながら帽子を傍の机に置き、近くの椅子に腰掛けた。 ジョゼーヌも反対側の椅子に腰を掛ける。 「あら、遅かったじゃないの。待っていたわよ、"魔獣使い"さん」 |