「おい、見ろよボイラー!崖の上にガキが2人いるぜ」 「へへへ……奴らも、あの剣を手に入れようとしてんのか。 この森の恐ろしさってぇやつが、まるで解かってないな。 どれ、ちょいと俺様が教えてやろうか」 「あまり無茶すんなよ。騒ぎを起こすと、後々面倒だ」 「ああ、解かっているさ。 ハルカ様に見つかったら、何を言われるか大体想像がつく」 この2人の男はレモリア帝国の兵士である。 ジルドゥクの森に眠っている"聖剣ブルー・ティアーズ"を狙う輩の排除、 それが、彼らに与えられた役目である。 レモリア帝国には現在2人の将軍がいる。 1人はグレイス=ウィザード。まだ若いながらも帝国一の実力を持つ男である。 そして彼らの指揮をとっているのが、もう1人の将軍ハルカ=ウィザード。 グレイスとは双子の兄弟で、珍しい女性将軍である。 彼女に任務を与えられた2人の兵士は、ボイラーとジャック。 ハルカ将軍の統率する、青銅騎士団に所属している。 「ひょおっ!危ない……。ここ、足場悪すぎ……。 ザリア!どんどん先に行かないでくれよ」 「我慢してよね。崖道を通ったほうが、人に見つからなくて済むでしょ? こんな森に用はないから、さっさと抜けないと酷い目に遭うわよ」 「まぁ、こんな狭いところに魔物達が現れるとは思えないからいいけど。 足場が悪く走れないから、いつまでたっても森を抜け出せないな」 レヴィンとザリアは、人に見つからないように慎重に歩いていた。 だが不運にも、レモリア帝国監視兵のボイラーとジャックに見つかってしまう。 「気合いよ、気合い!なるとかなるなる!……あ」 ザリアがレヴィンの方を振り向いた時、 2人の男がレヴィンの背後に立っている事に気づいた。 「おっとぉ、お前達そこまでだ。ストップ!」 ジャックがレヴィンの肩を掴んだ。 「あんた達、誰?」 ザリアは"きっ"と2人の男を睨んだ。 「俺達はこの森の監視兵だ。お前達も、あの剣を狙おうってぇ輩だろ?」 「あの剣って、例の聖剣のことね?残念だけど、私達はあの剣に用はないの。 この森を抜け出せれば、それでOKよ。だから、構わないで頂戴」 「へへへ……あの剣狙いの奴らは、みんなその台詞を吐く。 ガキだからといって、情けはかけねぇ。あの剣を狙う輩は全員排除させてもらう。 ……おっと、悪く思うなよ。これも城の命令だからな。 恨むんなら、俺達じゃなく帝国を恨みな。俺達は命令に従っているまでよ!」 「だ・か・ら!違うっつってんでしょー!!」 ―――バシッ――― ザリアは即座にジャックの傍に駆け寄り、彼の頬に一発平手打ちを噛ました。 ザリアの力が強かったのか、ジャックは3m背後にある木までぶっ飛んだ。 その際、頭を強打したため、そのまま気絶してしまった。 「ジャーック!!」 「ありゃ?ちょっと強く叩きすぎちゃったかな?失敗失敗」 「……てめぇ、よくもジャックを!!」 ボイラーは鞘から剣を抜き、ザリアに構えた。 「その拳さえあれば、ザリアに魔法は要らないんじゃ……」 「あらレヴィン、何か言ったかしら?」 ザリアが青筋を立てながらレヴィンにじわじわと詰め寄る。 「な、何も言ってないって!気のせいだよ、気のせい!!」 「ふーん、それならいいけど。 あまり変な事を言うと……解かっているよね?レ・ヴ・ィ・ン♪」 「は……はい」 その様子を見ていたボイラーは、ザリアに恐怖心を抱いたのか、 気絶しているジャックを背負ったまま逃げ出してしまった。 「城の兵士といえど、あっけないわね」 ザリアは溜め息をつくと、傍にあった切り株に腰掛けた。 「少し休憩していきましょうか。歩きっぱなしで疲れたでしょ?」 「んー確かに。ちょうど腹も減ってきたし、そうしようか」 「よぉ、ちょいとお邪魔させてもらうぜ」 2人が休息していると、何者かが話しかけてきた。 「ザリアって言ったか?さっきの争いを見ていたけどよぉ。 お前、見たところ魔法使いか何かだろ? それにしては、武術もなかなか強いじゃねぇか」 「ん?また城の兵士さん?いい加減懲りない人達ね。 今度は3人ね。いいわ、相手してあげる。かかってらっしゃい!」 「ザリア、ちょっと待った。この人達、兵士じゃないと思う。 兵士の鎧も着てないからな。」 「はは、彼の言うように俺達は城の兵士じゃねぇよ。 俺の名はバンガード=マイヤー。 俗に言うギルド・ハンターって奴さ。なぁ、シオン?」 「……あぁ」 「ふーん……城の兵士じゃないだ。 ……で、そのギルド・ハンターさんが私達に何の用?」 「ティナ、説明よろしく!」 「うん、解かった」 レヴィン達の前に突如現れた3人。 このシオン、ティナ、バンガードとの出会いが、 彼らの運命を大きく変えることになる。 |