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第08話「出会い」


「おい、見ろよボイラー!崖の上にガキが2人いるぜ」
「へへへ……奴らも、あの剣を手に入れようとしてんのか。
 この森の恐ろしさってぇやつが、まるで解かってないな。
 どれ、ちょいと俺様が教えてやろうか」
「あまり無茶すんなよ。騒ぎを起こすと、後々面倒だ」
「ああ、解かっているさ。
 ハルカ様に見つかったら、何を言われるか大体想像がつく」
この2人の男はレモリア帝国の兵士である。
ジルドゥクの森に眠っている"聖剣ブルー・ティアーズ"を狙う輩の排除、
それが、彼らに与えられた役目である。
レモリア帝国には現在2人の将軍がいる。
1人はグレイス=ウィザード。まだ若いながらも帝国一の実力を持つ男である。
そして彼らの指揮をとっているのが、もう1人の将軍ハルカ=ウィザード。
グレイスとは双子の兄弟で、珍しい女性将軍である。
彼女に任務を与えられた2人の兵士は、ボイラーとジャック。
ハルカ将軍の統率する、青銅騎士団に所属している。

「ひょおっ!危ない……。ここ、足場悪すぎ……。
 ザリア!どんどん先に行かないでくれよ」
「我慢してよね。崖道を通ったほうが、人に見つからなくて済むでしょ?
 こんな森に用はないから、さっさと抜けないと酷い目に遭うわよ」
「まぁ、こんな狭いところに魔物達が現れるとは思えないからいいけど。
 足場が悪く走れないから、いつまでたっても森を抜け出せないな」
レヴィンとザリアは、人に見つからないように慎重に歩いていた。
だが不運にも、レモリア帝国監視兵のボイラーとジャックに見つかってしまう。
「気合いよ、気合い!なるとかなるなる!……あ」
ザリアがレヴィンの方を振り向いた時、
2人の男がレヴィンの背後に立っている事に気づいた。
「おっとぉ、お前達そこまでだ。ストップ!」
ジャックがレヴィンの肩を掴んだ。
「あんた達、誰?」
ザリアは"きっ"と2人の男を睨んだ。
「俺達はこの森の監視兵だ。お前達も、あの剣を狙おうってぇ輩だろ?」
「あの剣って、例の聖剣のことね?残念だけど、私達はあの剣に用はないの。
 この森を抜け出せれば、それでOKよ。だから、構わないで頂戴」
「へへへ……あの剣狙いの奴らは、みんなその台詞を吐く。
 ガキだからといって、情けはかけねぇ。あの剣を狙う輩は全員排除させてもらう。
 ……おっと、悪く思うなよ。これも城の命令だからな。
 恨むんなら、俺達じゃなく帝国を恨みな。俺達は命令に従っているまでよ!」
「だ・か・ら!違うっつってんでしょー!!」

―――バシッ―――

ザリアは即座にジャックの傍に駆け寄り、彼の頬に一発平手打ちを噛ました。
ザリアの力が強かったのか、ジャックは3m背後にある木までぶっ飛んだ。
その際、頭を強打したため、そのまま気絶してしまった。

「ジャーック!!」
「ありゃ?ちょっと強く叩きすぎちゃったかな?失敗失敗」
「……てめぇ、よくもジャックを!!」
ボイラーは鞘から剣を抜き、ザリアに構えた。
「その拳さえあれば、ザリアに魔法は要らないんじゃ……」
「あらレヴィン、何か言ったかしら?」
ザリアが青筋を立てながらレヴィンにじわじわと詰め寄る。
「な、何も言ってないって!気のせいだよ、気のせい!!」
「ふーん、それならいいけど。
 あまり変な事を言うと……解かっているよね?レ・ヴ・ィ・ン♪」
「は……はい」
その様子を見ていたボイラーは、ザリアに恐怖心を抱いたのか、
気絶しているジャックを背負ったまま逃げ出してしまった。
「城の兵士といえど、あっけないわね」
ザリアは溜め息をつくと、傍にあった切り株に腰掛けた。
「少し休憩していきましょうか。歩きっぱなしで疲れたでしょ?」
「んー確かに。ちょうど腹も減ってきたし、そうしようか」

「よぉ、ちょいとお邪魔させてもらうぜ」
2人が休息していると、何者かが話しかけてきた。
「ザリアって言ったか?さっきの争いを見ていたけどよぉ。
 お前、見たところ魔法使いか何かだろ?
 それにしては、武術もなかなか強いじゃねぇか」
「ん?また城の兵士さん?いい加減懲りない人達ね。
 今度は3人ね。いいわ、相手してあげる。かかってらっしゃい!」
「ザリア、ちょっと待った。この人達、兵士じゃないと思う。
 兵士の鎧も着てないからな。」
「はは、彼の言うように俺達は城の兵士じゃねぇよ。
 俺の名はバンガード=マイヤー。
 俗に言うギルド・ハンターって奴さ。なぁ、シオン?」
「……あぁ」
「ふーん……城の兵士じゃないだ。
 ……で、そのギルド・ハンターさんが私達に何の用?」
「ティナ、説明よろしく!」
「うん、解かった」
レヴィン達の前に突如現れた3人。
このシオン、ティナ、バンガードとの出会いが、
彼らの運命を大きく変えることになる。


第08話「出会い」終わり