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第10章「辻斬り対策案決議」


「さて・・例の辻斬り事件についてだが・・どうする?」
「どうするもこうするも、あたし達が何とかするしかないじゃないの!」
アレフの言葉に即切り替えしてくるリーザ。
「だから、具体的に何をするのかを話してるんだよ。」
「ま、辻斬りが出るっていうのなら、あたし達が見回るのが一番でしょうね。」
「そうだね・・。というかそれしかできないと思う。」
リーザの意見に素直に頷くリュナン。
実際のところ、手がかりも何も無い以上歩き回るしかないというのは正論である。
「ふむ・・町長の話じゃ目撃者もそういないってことだしな。
 情報を集める意味でもこいつの言う通り見回るしかないか。」
「うむ!!ワシらの手でその辻斬り犯とやらを成敗してやるんじゃ!!」
「うぉぉぉ!!腕がなるわい!」
ウォルトが気合を入れて拳を作る。
「あ・・いや・・悪いがウォルトは今回の見回りから外れてもらいたいんだが・・。」
だが、そんなウォルトにアレフが水を差す。
「うぉぉぉぉ!!何故じゃアレフ!!ワシだってこの不埒な輩を!!」
「アレフ。どうしてウォルトは駄目なの?」
アレフの言葉に疑問を投げかける二人。
「あー・・まぁ、辻斬りっていう今回の事件の特性上だな。」
困った顔で答えるアレフ。
「こういう事件は、見た目にもか弱い人間が狙われる。」
「ウォルトだと、か弱いとは思われないだろ?」
それは最もな話だった。
ウォルトを見て思いつく言葉は豪傑とかいったところだろう。
か弱いという言葉からはおそらく一番程遠い人物である。
「じゃあ、誰が見回るの?」
「ああ、それなんだがな・・・。」
ちら、とリュナンの方を見てアレフが言った。
「・・リュナン、お前が女装するのが一番なんだよな・・。」
「・・・え?」
「・・・ええ〜!?」
色々な方面から驚きの声が聞こえてくる。
「いや・・こういう場合やはり狙われるのは女性が多いからな。」
「ちょっと!!ならなんであたしじゃないのよ!!」
確かに、リーザの言う通りだ。
本物の女性であるリーザを差し置いてリュナンの女装を優先させるとは。
「いや、お前は見た目にか弱いとは思われないだろう。」
「なんですってーー!!」
リーザがこの日何度目になるのかわからないが、キレた。
「ほら!その姿みて誰がか弱いって思うんだよ!!」
「う・・。」
その場にあったゴミ箱を投げようとしたリーザの手がピタりと止まった。
「ま・・それにリュナンを選んだのはそれだけが理由じゃない。」
「え?どういうことよ?」
「単純に、実際にそいつに会った時の対処だよ。」
アレフが近くのベッドの上に腰掛けながら話し出す。
「魔法使いのお前じゃ、刃物を使った相手の奇襲には対処できねぇだろ。」
「まぁ、それは確かにそうだけど・・・。」
リーザは納得、といった感じで下を向いた。
「で、でも僕は女装なんてしないよ!!やるならアレフがやればいいじゃないか!」
リュナンが猛然と抗議する。
「バカ。俺がやったって気持ち悪いだけだろうが。」
「ぼ、僕がやったって同じだろ!」
「お前は女顔だからな・・やりようにやっちゃいけそうだろ?」
リュナンは確かに、パッと見女と思えなくもない、整った顔立ちをしている。
体つきも、鍛えてはいるがそんなにがっしりしているわけでもない。
むしろ一見華奢ともとれる体つきである。
「それにだ・・女装するとなると当然服とかも必要になるわけで・・」
「そしたらあいつに借りるしかないだろ?」
リーザの方に視線を向けるアレフ。
「ん、まぁそうなるわね。あんた達が女物の服買うわけにもいかないだろうし。」
「んでリュナン。お前、身長いくつだ。」
「う・・ひゃ、156・・・。」
ぼそっとリュナンが言った。
「俺、191。ウォルトは・・身長以前に着れそうにないな。」
「あたし、154。」
「・・・決まりだな。」
「・・・決まりね。」
「い、嫌だ!僕は絶対女装なんてしない!!」
準備を始めようとしたリーザとアレフを止めてリュナンが叫ぶ。
これほど焦って他人を止めようと思ったことは、今まで無かった。


第10章「辻斬り対策案決議」終わり