「さて・・例の辻斬り事件についてだが・・どうする?」 「どうするもこうするも、あたし達が何とかするしかないじゃないの!」 アレフの言葉に即切り替えしてくるリーザ。 「だから、具体的に何をするのかを話してるんだよ。」 「ま、辻斬りが出るっていうのなら、あたし達が見回るのが一番でしょうね。」 「そうだね・・。というかそれしかできないと思う。」 リーザの意見に素直に頷くリュナン。 実際のところ、手がかりも何も無い以上歩き回るしかないというのは正論である。 「ふむ・・町長の話じゃ目撃者もそういないってことだしな。 情報を集める意味でもこいつの言う通り見回るしかないか。」 「うむ!!ワシらの手でその辻斬り犯とやらを成敗してやるんじゃ!!」 「うぉぉぉ!!腕がなるわい!」 ウォルトが気合を入れて拳を作る。 「あ・・いや・・悪いがウォルトは今回の見回りから外れてもらいたいんだが・・。」 だが、そんなウォルトにアレフが水を差す。 「うぉぉぉぉ!!何故じゃアレフ!!ワシだってこの不埒な輩を!!」 「アレフ。どうしてウォルトは駄目なの?」 アレフの言葉に疑問を投げかける二人。 「あー・・まぁ、辻斬りっていう今回の事件の特性上だな。」 困った顔で答えるアレフ。 「こういう事件は、見た目にもか弱い人間が狙われる。」 「ウォルトだと、か弱いとは思われないだろ?」 それは最もな話だった。 ウォルトを見て思いつく言葉は豪傑とかいったところだろう。 か弱いという言葉からはおそらく一番程遠い人物である。 「じゃあ、誰が見回るの?」 「ああ、それなんだがな・・・。」 ちら、とリュナンの方を見てアレフが言った。 「・・リュナン、お前が女装するのが一番なんだよな・・。」 「・・・え?」 「・・・ええ〜!?」 色々な方面から驚きの声が聞こえてくる。 「いや・・こういう場合やはり狙われるのは女性が多いからな。」 「ちょっと!!ならなんであたしじゃないのよ!!」 確かに、リーザの言う通りだ。 本物の女性であるリーザを差し置いてリュナンの女装を優先させるとは。 「いや、お前は見た目にか弱いとは思われないだろう。」 「なんですってーー!!」 リーザがこの日何度目になるのかわからないが、キレた。 「ほら!その姿みて誰がか弱いって思うんだよ!!」 「う・・。」 その場にあったゴミ箱を投げようとしたリーザの手がピタりと止まった。 「ま・・それにリュナンを選んだのはそれだけが理由じゃない。」 「え?どういうことよ?」 「単純に、実際にそいつに会った時の対処だよ。」 アレフが近くのベッドの上に腰掛けながら話し出す。 「魔法使いのお前じゃ、刃物を使った相手の奇襲には対処できねぇだろ。」 「まぁ、それは確かにそうだけど・・・。」 リーザは納得、といった感じで下を向いた。 「で、でも僕は女装なんてしないよ!!やるならアレフがやればいいじゃないか!」 リュナンが猛然と抗議する。 「バカ。俺がやったって気持ち悪いだけだろうが。」 「ぼ、僕がやったって同じだろ!」 「お前は女顔だからな・・やりようにやっちゃいけそうだろ?」 リュナンは確かに、パッと見女と思えなくもない、整った顔立ちをしている。 体つきも、鍛えてはいるがそんなにがっしりしているわけでもない。 むしろ一見華奢ともとれる体つきである。 「それにだ・・女装するとなると当然服とかも必要になるわけで・・」 「そしたらあいつに借りるしかないだろ?」 リーザの方に視線を向けるアレフ。 「ん、まぁそうなるわね。あんた達が女物の服買うわけにもいかないだろうし。」 「んでリュナン。お前、身長いくつだ。」 「う・・ひゃ、156・・・。」 ぼそっとリュナンが言った。 「俺、191。ウォルトは・・身長以前に着れそうにないな。」 「あたし、154。」 「・・・決まりだな。」 「・・・決まりね。」 「い、嫌だ!僕は絶対女装なんてしない!!」 準備を始めようとしたリーザとアレフを止めてリュナンが叫ぶ。 これほど焦って他人を止めようと思ったことは、今まで無かった。 |