「君は・・昨日の!?」
リュナンがその人影に話しかける。
そこにいたのは、あの少女であった。
「まったく!あんたあんなこと言ってたんだから、もっと強いと思ってたわよ!」
いきなりの罵声。リュナンはさらに沈み込む。
「う・・ご・・ごめん・・。」
「まぁいいけどね。それより、どうなの?」
「リュナン、こいつは知り合いか?」
アレフが言葉をかぶせる。
「うん・・・まぁ・・一応。」
「・・なるほど。こいつが昨日落ち込んでた原因ってわけか。」
「落ち込む?あんた本当駄目ね〜・・。女に言われたくらいでへこんでるんじゃないわよ。」
リュナンは無言になってしまった。
「で、どうすんの?今はあの場所からはあいつは動かないけど、夜になれば動き出すわ。」
「・・・信頼できねぇな・・。」
アレフが言う。
「昨日何が起こったのかは知らないが、お前とリュナンが昔からの知り合いってわけでもなさそうだ。
「それにお前がここに来た理由も曖昧だ。・・・何しにきたんだ。」
「・・・私には私の目的があってきたのよ。もちろん、自分のためにね。」
「まぁあたしとしてはあんたたちがやられようとどうしようと知ったことではないんだけどね。」
「助けがいらないっていうならいいわよ?別に。でもあいつらに剣はきかないけど。」
「・・・お願いするよ。」
「リュナン!?」
「僕らのやるべきことはあいつを倒すことだ。その為には彼女の力が要るんだ。」
「・・・リュナンがそういうならワシは文句ないわい。」
ウォルトが賛同する。
「あんたはどうなの?」
「・・・。しょうがねえ。頼む。」
「はい、交渉成立!」
「じゃ、作戦を説明するわよ。」
「うん。」「おう!」「・・・ああ。」
「あいつは生半可な攻撃をしても無駄よ。だから・・・」
「あたしの大魔法でドーン!!とやっちゃおうってわけ。」
「あんたたちは、その間必死であたしを守ること。それと・・・」
「あいつをあの場に足止めし、なおかつすぐに魔法の射程から外れること。」
「・・となると・・」
リュナンが首をかしげる
「囮役がいるな。それとこいつをあの火球から守るやつが。」
「そいつはワシの役目じゃな!」
ウォルトが胸を叩く。
「足止めは俺がやる。この中じゃ一番足が速いからな。」
「リュナン、お前は他の魔物が出てきた時、こいつを守れ。」
「わかった。」
「じゃ・・・作戦開始!!」
再び魔物のまつ部屋へ入る四人。
「炎・・混沌の世を照らし、万物の始祖たる火の球よ・・・」
詠唱を始める少女。
「うお〜〜〜!!!閃光!!」
少女を守るべく火球を斧で弾いていくウォルト。
「!・・こっちからか!」
他の魔物を片っ端から倒していくリュナン。
「デカブツさんよ・・・おとなしくこの場に張り付いていやがれ!」
槍で牽制しながら、相手を足止めするアレフ。
「・・・今ひとたび始まりの爆発を!ビックバン!!」
詠唱が終わり、少女の持っていた杖が魔物の方へ向く。
「離れて!!」
その声と同時に跳躍するアレフ。そしてその瞬間・・。
ドーン!!
爆音とともに魔物は消え去った。だがその部屋も同時に、この世から消え去っていった。
「けほっけほっ・・。みんな、大丈夫〜!?」
崩れた洞窟の残骸から、リュナンが顔をだす。
「おい・・加減ってものをしらないのかお前・・・。」
「う・・うるさいわね!!魔物は倒したんだし、いいじゃない!!」
「これはやりすぎだと思うがのう・・。」
埋まっていたウォルトが顔をだす。
「ま・・あれよね。あたしの魔法が予想外にすばらしい威力だったってことよ。」
「単に未熟なだけじゃねぇのか?」
「黙りなさいよ!」
ガラッ・・瓦礫の中から何かが飛び出す。
「何あれ!?」
それはあの魔物が甲羅をとった姿だった。甲羅を脱いで身軽になった魔物は、
異常なスピードで少女に向かって突進を始めた。
「え!?ちょっ・・・。」
あまりの出来事に反応できない少女。
とっさに目を閉じてしまう、
ザンっ!!
次の瞬間、少女がみたものは、
切り裂かれて飛んでいく魔物と、剣を振り切ったリュナンの姿だった。
「・・大丈夫?」
「え?・・・あ・・うん・・。」
「そっか・・甲羅をぬげなきゃ、あそこから出て村を襲うなんて不可能だもんね・・。」
「そ・・そうね・・。」
「?どうしたの?どっかやられたとか?」
「な・・なんでもないわよ!!」
少女は顔を真っ赤にしながら、リュナンを突き飛ばした。
「ありがとうございます!!これで安心できます!!」
村に戻った一行を、村長が精一杯の感謝の言葉とともに出迎える。
「僕たちは当然のことをしただけですよ。」
リュナンがこたえる。
「ま、あたしが行かなきゃ危なかったけどね〜。」
「おお!間に合ったみたいですな。」
「ふっふーん・・ねぇ村長さん?」
怪しげな笑みを浮かべて少女が村長に詰め寄る。
「や・く・そ・く。」
「・・どうぞ。」
村長の手から少女に十字架が手渡される。
「どーも!」
「なんだそりゃ・・十字架?」
「ふふん・・これは一見ただの十字架にみえるけど、実はこれはねぇ・・。」
「あの遺跡が数百年前のものってのは知ってるわね?実は・・」
五時間経過。
「・・・つまり、レアものよ!!」
「長い説明だったな、おい・・。」
アレフがあきれほうける。リュナンは素直に感心している。ウォルトは寝ていた。
「ってことは・・君はその十字架のために?」
「そうよ。あんたは人のためかもしれないけど、あたしはレアもののために戦ったの!!」
「・・・まぁ・・価値観は人それぞれだもんね。」
「あら・・流石に物分りはいいわね。」
「でも僕は僕がやりたいから人のために戦うよ。やっぱり、それが僕だもの。」
「・・・あ、・・・そう。」
少女の顔は、そっけない言葉とは裏腹に少しうれしさのようなものを秘めていた。
「ぐごごごごごごごごぉぉぉぉ」
村の中にウォルトのいびきが響いた。
「で・・あんたたちはこれからどうするの?」
一夜明けて出発の朝。少女が呼びかける。
「うん。また魔物にこまっている人のところに助けにいくよ。」
「ねぇ。」
「なんだ。小娘。」
「うっさいキザ男!!・・あたしも連れてってくれない?」
「え?」
「だって・・・」
「あんた達についていった方がレアものを見つけられそうじゃない!」
「おいおい・・そんな理由で・・」
「あら?価値観は人それぞれよ。そ・れ・に・・・」
「また今回みたいなことになった時のために、魔法使いはいると思うけど〜?」
「う・・」
アレフは反論できなかった。
「いいよ。一緒に行こう。」
「リュナン!?」
「だって彼女の力はものすごいし、それに大勢の方がいいじゃない。」
「ったく・・お前ってやつは・・。」
「ワシはどっちでもかまわんぞい。」
「・・・もういい。」
「よし!交渉成立!!」
少女が指を鳴らす。
「あ・・自己紹介まだしてなかったよね。僕はリュナン・アルナム。で・・こっちの背の高いのが・・」
「・・・アレフ・リュート。」
アレフが気だるそうに伝える。
「ワシはウォルト・ラヴァンじゃ。」
「君の名前は?」
「・・・あたしの名前は・・」
「リーザ。」
「リーザ・ジェイルよ。」
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