「ここか・・・」 
三人の目の前にはぽっかり口を開けた洞窟の入り口があった。 
例の魔物が昼の間根城にしているという古代遺跡である。 
「・・・・。」 
リュナンはまだ先日あの少女に言われたことを引きずっていた。 
「・・あのな、リュナン。」 
「え?」 
「何があったかは知らないが、お前がそれじゃあ困るんだよ。」 
アレフがため息をつきながら言う。 
「そうじゃい。何せこれから魔物と一線やらかすんじゃからな。」 
ウォルトもそれに答える。
「・・ねぇ、二人は何のために・・」 
言いかけてリュナンは口をつむぐ。これから魔物退治に行こうというのに、 
余計なことを言うのはよくないと思ったからだ。 
「?・・とにかく、そのままじゃお前が死ぬぞ。しゃきっとしろ!しゃきっと!」
慎重に入り組んだ遺跡の跡を進む三人。 
途中にある明らかな人工の建造物がここが元遺跡だということを物語っている。 
奥へと進む三人、そして三人が急に開けた空間に出たかと思うと、いきなり火球が三人を襲った!! 
「ちぃ・・散れぇ!!」 
アレフの号令で、一斉にその場を離れる三人。 
先ほど三人がいた場所に火球がぶつかる。 
「現れたな・・。」 
その火球を放ったのはまるで亀のような甲羅をもった化け物だった。 
「先手必勝だ!!」 
アレフが一瞬にして相手の懐に飛び込む!!
「閃光!!」 
そして聖へレンズ帝国の技の一つ、閃光を放った。 
「な・・!!」 
しかし魔物の硬い甲羅の前には、傷一つつけることができなかった。 
「ならばこれで・・どうじゃい!!」 
アレフに気を取られていた魔物に、ウォルトが斬りかかる!! 
「燃えつきるんじゃー!!」 
切っ先に炎を込めて魔物に振り下ろす。 
しかし相手はその炎を吸収してしまった。 
「やっかいだな・・炎属性か。紅蓮がつかえねぇ!!」 
「(やつの甲羅は剣や火を通さない。なら・・リュナンのあれなら!!)」 
「リュナン!!おい!!何ぼーっとしてやがる!!」 
「えっ!!あっ・・ごめん!」 
リュナンははっと我に帰る。 
「ちぃ・・いいからこないだの奴、出せるかやってみろ!!あれなら効くかもしれねぇ!!」 
「う、うん。いやぁぁぁぁぁ!!!!」」 
リュナンがこの間魔将軍に放った衝撃破を出そうと下から上に切り上げる。 
・・・しかし、衝撃破はでなかった。それどころかまともに硬い甲羅に切りかかり、 
リュナンは剣をはじいてしまった。 
「あ・・・」 
次の瞬間、相手は剣を失ったリュナン相手に思いっきり体当たりをかました。 
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 
まともに体当たりをくらったリュナンは凄まじい勢いで壁に叩きつけられた。 
そのままその壁沿いに座り込んでしまう。 
「リュナン!!」 
そして魔物は動けなくなったリュナンに再び火球をぶつけようとする。 
「くぅ・・やらせはしないぞい!!」 
ウォルトが懸命に斬りかかるが、相手は微動だにしない。
そのまま火球を放とうとすると・・ 
「リュナン!!」 
アレフの叫びも空しく火球は発射されてしまう。 
「・・・空に漂う大気の精よ。凍てつき、彼の者を討つ氷の矢となれ!」 
何者かの言葉が聞こえる。 
次の瞬間、突如現れた氷の矢によって火球はリュナンにあたることなく消滅した。 
「あーあ、見ちゃいらんないわねー。」 
先ほど破壊されて少し大きくなった入り口から、何者かの声がきこえる。 
リュナンにとって、それは聞き覚えのある声だった。 
「どう?どうしてもっていうなら、力貸してやらないことも無いけど。」 
「き、君は・・・!!」 
次の瞬間、リュナンの目ははっきりとその姿を捉えた。 
それは・・・ 
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