「お・・お姉ちゃん・・大丈夫・・?」 「あれ・・?その子・・・。」 リュナンと少女が口論していると、女の子が近寄ってきた。 どうやらその子はその少女に話し掛けているらしい。 「ああ・・大丈夫よ。ほら・・これでしょ?」 少女は優しげな笑みを浮かべると、その女の子にボールを差し出した。 「もう木に引っ掛けるんじゃないわよ!!」 「うん・・・ありがとう、お姉ちゃん!!」 そういうと少女は何度も頭を下げながらその場を後にした・・。 「ぷっ・・あはは・・。」 「!!何よ。何がおかしいのよ!!」 「いや・・ごめん。君って本当は優しいんだな、って思ってね。」 「バ・・バッカじゃないの!!??」 バシっ!! 少女は耳まで真っ赤にしながらリュナンに平手打ちをかました。 「なんで・・殴られるの・・?」 「外に勝手にでちゃだめだって言うから、あたしが付き添ってあげたのよ。」 「大事なボールを木に引っ掛けたって泣いてたからつい・・ね。」 「そうだったんだ・・・」 「か・・勘違いしないでよ!?あたしはただ・・・。」 「だ、大体なんであんたはこんな所にいるのよ!?」 「僕も同じ。外で思いっきり遊べないなんて、子ども達が可哀想だったから・・。」 「ふぅん・・まぁいいわ。で、あんた・・村の人じゃないわよね。」 「うん・・。聖へレンズ城からきたんだ。」 「何しに?」 「この村の人たちを・・守りにね。」 「ぷっ・・あはは・・。」 「な・・何がおかしいんだよ。」 「だってあんた・・・どうみたって強そうには見えないもん。」 少女がそう思ったのも無理はない。リュナンは実際剣術に長けているが、 その外見は年相応の幼くて少々頼りなさすらも感じられる程だ。 「何?なんで守ろうなんて思うわけ?」 「・・・人が傷ついていくのなんて・・みたくないから・・。」 「・・・。」 少女の顔が険しくなる。 「あたし、あんたとは友人にはなれそうにないわ。」 「え?」 突然の少女の言葉にリュナンは驚いてしまった。 「あんたみたいに理由もなく、ただ人の為にいいことしたいっていう奴信用できないの。」 「結局そういうのって、人の為って言いながらも自分の為なのよね。」 「別に僕は何も・・」 「何も求めてない。そう言いたいんでしょ。」 少女がリュナンの言葉をさえぎる。 「自分の行為が誇らしいのよね。いいことしてるって、善人ぶりたいのよね。」 「で・・結局その行為をすることによって周囲にいい奴だって認識されたいだけなんでしょ。」 「そして・・何かあったらすぐに手のひらを返すつもりでしょ。」 「そんなの・・最初から何かの為だって言った方がまだ信用できるわよ。」 「・・・あたしの一番嫌いな人間だわ。あんた。」 少女はそう言い切るとリュナンの傍から離れていった。 「リュナン兄ちゃ〜ん!!全員見つけたからもう一回・・」 少年の言葉も、リュナンの心には届いていなかった。 「リュナン。目的地が決まったぞ。」 村に戻ったリュナンに、アレフが告げる。 「この近くの洞窟に住む魔物が、夜になるとこの村までやってきて人を襲うらしい。」 「その洞窟は古代の遺跡跡らしい。入り組んでるらしいから、今地図を書いてもらってる。」 「今日はここに泊めてもらって、明日の朝になったら出発じゃい。」 「・・・リュナン?」 沈んだままのリュナンにアレフが問い掛ける。 「僕は・・偽善者なのかな?」 「はぁ?」 「ごめん!!・・なんでもない・・。」 「何があったんじゃ?リュナン?」 アレフもウォルトも不思議そうな顔をしてリュナンをみる。 「何でも・・・ないよ。」 「どうでもいいが、明日はしっかりしろよ。足手まといになられちゃ困る。」 「うん・・ごめん。」 「(そうだ・・しっかりしなきゃ。村の人たちの為にも・・・。)」 「(!!この気持ちも・・・本当は僕の為・・・ってことなのかな。)」 その夜リュナンは自問自答を繰り返していった。 そして・・洞窟への出立の朝を迎えた。 |