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第1話「命令、そして…」


聖へレンズ帝国の謁見の間。
そこに三名の青年達が王の前に集められていた。
「リュナン・アルナム、ウォルト・ラヴァン、アレフ・リュート。」
「貴公ら三名の将軍に今より重大な任務を与える。」
「はっ!」
「貴公らの任務は魔王ガルドゥーン討伐だ。」
「!!魔王・・ですか・・。」
三人の青年の中の一人。リュナンと呼ばれた栗色の髪の青年が驚きの声を発した。
無理もない。
魔王ガルドゥーンとはこの世界に魔族、そして魔物を放った恐るべき存在だ。
その討伐を命じられて驚かない方がおかしい。
「そうだ。魔族のお陰で罪もない我が国の国民達が苦しめられておる。」
「この現状を・・見過ごす訳にもいくまい。」
一年前まで・・この世界は平和そのものであった。
だが・・魔王ガルドゥーンが降臨し、世界に向けて魔物を放った。
その時から・・この世界は平和ではなくなった。
死の匂いの満ちた・・恐るべき世界となってしまったのだ。
「はっ!お任せ下さい!!魔王・・私達が必ず打ち倒してみせます!」 「アレフ!?」
アレフと呼ばれた長身で、身体の細い若者がはっきりとそう答えた。
「何だリュナン・・自信ないならお前は辞退したらどうだ?」
皮肉を利かせてアレフがリュナンに言った。
「いや・・」
「僕も行くよ。闘わなきゃ・・皆を守れないから。」
「ふん・・・。」
リュナンのはっきりした答えにアレフは毒気を抜かれてそのまま黙ってしまった。
「うぉぉ!!魔王討伐・・腕がなるわい!!」
ウォルトと呼ばれた巨漢の男が気合を入れながら叫んだ。
「ふ・・体力バカの方は考えないから怖いもの無しだな・・。」
「なんじゃと!!」
「や・・やめなよ二人とも・・!!」
「コホン!!」
国王ブレイドの咳払いに三人ともハッとなり慌てて正面を向いた。
「とにかく!」
「貴公らは魔王討伐の旅にでるのじゃ!・・頼んだぞ、将軍達よ!!」

将軍達は敬礼してその場を後にした。

「さて・・これからどうする?」
アレフの問いにリュナンは、
「とりあえず・・城下町で情報を集めよう。魔物の被害の多いところを調べて・・」
「で・・出来るだけ多くの人達を助けていけばいいんじゃないかな・・。」
そう答えた。ウォルトは
「うむ。さすがリュナンじゃい。わしもそれに賛成じゃ。」
だがアレフは一人不満そうだ。
「ふん・・そんな消極的な方法でどうする。魔王の居場所はわかっているんだろう?」
「だったらさっさと魔王を倒した方が早い。」
「でも・・僕は今苦しんでる人たちを見過ごすことは出来ないよ!!」
リュナンはそう答える。アレフは肩をすくめて
「はっ!ご立派な考えだ。だが、俺たち三人で一体何人の人間が救えるってんだ?」
「それは・・・。」
「じゃがアレフ!!我らの目的は人々を救うことじゃろう!!」
「だったらさっさと大元を消した方が早いってことだ。」
「なら・・俺は一人で魔王討伐に行く。お前らは勝手に救助活動しててくれ。」
「駄目だよ!一人でなんて行かせられない!!」
「ふ・・リュナンのくせに一丁前に俺に説教を垂れるのか?」
「もう我慢ならん!!リュナン。アレフなんぞ勝手に行かせればいいんじゃ!!」
「ウォルトも落ち着いて!!駄目だよ、ちゃんと三人で・・・」
「!危ない!!」
突然リュナンがアレフを突き飛ばした。
その瞬間・・アレフの立っていた場所を目掛けてナイフが刺さる。
「な・・・。」
「ほう・・私の殺気に気づくとは・・。」
「誰だ!?」
三人が声のする方を向く。そこには黒いマントをまとった男が立っていた。
「ふ・・名乗る必要は無いさ!!これから死人となるもの達にはな!!」
リュナン達はそれぞれの武器を抜き、男に向かって構えた。



第1章 「命令、そして・・・」終わり