魔獣の森、そこには多くの凶暴な魔物たちが潜み、人々から恐れられている場所である。 聖ヘレンズ自警団の隊長スコール・ノリスは3人の部下を引き連れこの森の調査に来ている。 この男、スコールは顎(あご)まで長いヒゲを生やし、やや太り気味なオヤジである。 また目が悪く、普段から青い眼鏡をかけている。青色が好きなようだ。 「魔獣の森の調査に来たはいいが、ここより奥の調査はごめんだな」 自慢の長いヒゲを撫でながら、スコールは傍にある木の丸太に腰掛けた。 「隊長、どうします?奥に進まないと、また怒鳴られますぜ?」 部下の1人がスコールの隣にしゃがみこんだ。 スコールは腰に下げていた水筒を手にし、水をひと飲みした。 「ふぅ・・・いくら司令の命令とはいえ、奥に進むのは命がいくつあっても足りぬわ」 「ですよね・・・」 「将軍たちに調査させればよいのだ!将軍たちに!!」 スコールは自警団の隊長ではあるが、剣の実力は一般兵と同程度である。 持ち前の判断力と統率力を買われての昇格であった。 「ん?隊長!何か今、後ろで物音が・・・」 「あぁん?」 スコールが振り返ると、そこには茂みがあるだけで人影はなかった。 「なんだ、誰もいないじゃないか・・・驚かせおって」 その時、スコールに飛びかかる一体の獣の姿が、部下たちの目に映った。 「た・・・隊長!後ろっ!!」 ・・・同時刻、魔獣の森・・・ 「あれ?なんか今、叫び声が聞こえませんでした?」 カインの部下であるリュウは、声のした方角を指した。 すぐさまカインは剣を身構えた。 「あぁ、確かに聞こえた・・・。行ってみよう」 (俺たちの他にもこの森に来ている者がいるのか・・・) カインたちが叫び声がした地点に辿り着いた頃には、すでに獣の姿はなかった。 跡に残ったのは、スコール隊長を含む4人の遺体だけ。全員すでに息を引き取っていた。 「これはひどい・・・」 カインはスコールの傷跡を見て、顔を少し背けた。 まだ幼いアランとリュウは、まともに彼らを見れないままでいる。 周りを警戒しつつも、ただその場で震えているだけであった。 「みんな一撃でやられている。この爪痕はいったい・・・」 「カイン将軍・・・魔獣に違いないですね・・・」 アランは身震いしながらも、スコールたちの体に刻まれた爪痕を確認した。 「魔獣か・・・ユウの言ったとおり、 この森には、厄介な敵が潜んでいるようだな・・・」 カインは過去にアラン、リュウと共に、魔獣ケルベロスを倒したことがある。 その功績で将軍になれたのだが、あの時もまさに生死を賭けたギリギリの戦いであった。 あれから実力も上がったとはいえ、今度の相手も魔獣ケルベロスと同等かそれ以上の相手に違いない。 そう思うと、徐々に不安がこみ上げてくる。 だが、負けるわけにはいかない。その将軍としての強い意志がカインをさらに奮い立たせた。 |