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第4話「蠢く影」


魔獣の森、そこには多くの凶暴な魔物たちが潜み、人々から恐れられている場所である。
聖ヘレンズ自警団の隊長スコール・ノリスは3人の部下を引き連れこの森の調査に来ている。
この男、スコールは顎(あご)まで長いヒゲを生やし、やや太り気味なオヤジである。
また目が悪く、普段から青い眼鏡をかけている。青色が好きなようだ。
「魔獣の森の調査に来たはいいが、ここより奥の調査はごめんだな」
自慢の長いヒゲを撫でながら、スコールは傍にある木の丸太に腰掛けた。
「隊長、どうします?奥に進まないと、また怒鳴られますぜ?」
部下の1人がスコールの隣にしゃがみこんだ。
スコールは腰に下げていた水筒を手にし、水をひと飲みした。
「ふぅ・・・いくら司令の命令とはいえ、奥に進むのは命がいくつあっても足りぬわ」
「ですよね・・・」
「将軍たちに調査させればよいのだ!将軍たちに!!」
スコールは自警団の隊長ではあるが、剣の実力は一般兵と同程度である。
持ち前の判断力と統率力を買われての昇格であった。
「ん?隊長!何か今、後ろで物音が・・・」
「あぁん?」
スコールが振り返ると、そこには茂みがあるだけで人影はなかった。
「なんだ、誰もいないじゃないか・・・驚かせおって」
その時、スコールに飛びかかる一体の獣の姿が、部下たちの目に映った。
「た・・・隊長!後ろっ!!」

・・・同時刻、魔獣の森・・・

「あれ?なんか今、叫び声が聞こえませんでした?」
カインの部下であるリュウは、声のした方角を指した。
すぐさまカインは剣を身構えた。
「あぁ、確かに聞こえた・・・。行ってみよう」
(俺たちの他にもこの森に来ている者がいるのか・・・)

カインたちが叫び声がした地点に辿り着いた頃には、すでに獣の姿はなかった。
跡に残ったのは、スコール隊長を含む4人の遺体だけ。全員すでに息を引き取っていた。
「これはひどい・・・」
カインはスコールの傷跡を見て、顔を少し背けた。
まだ幼いアランとリュウは、まともに彼らを見れないままでいる。
周りを警戒しつつも、ただその場で震えているだけであった。
「みんな一撃でやられている。この爪痕はいったい・・・」
「カイン将軍・・・魔獣に違いないですね・・・」
アランは身震いしながらも、スコールたちの体に刻まれた爪痕を確認した。
「魔獣か・・・ユウの言ったとおり、
 この森には、厄介な敵が潜んでいるようだな・・・」
カインは過去にアラン、リュウと共に、魔獣ケルベロスを倒したことがある。
その功績で将軍になれたのだが、あの時もまさに生死を賭けたギリギリの戦いであった。
あれから実力も上がったとはいえ、今度の相手も魔獣ケルベロスと同等かそれ以上の相手に違いない。
そう思うと、徐々に不安がこみ上げてくる。
だが、負けるわけにはいかない。その将軍としての強い意志がカインをさらに奮い立たせた。


第4話「蠢く影」終わり