「おいおい、呆れたな・・・まぁ〜た飲んでんのかい?」 呆れ顔の男は、近くの椅子に腰掛けると、軽く溜め息をついた。 この男の名はダグラス。錬金を生業として生活している。 「ぷはぁっ、このお酒おいしいっ♪やっぱりお酒はいいものよね♪」 酒飲みの女王の異名を持つ赤髪の女性シリアは、すでにこの店の酒を5杯ほど飲み干している。 「あまり飲み過ぎると体に悪いぞ」 「大丈夫よ♪まだまだいけるわ」 ダグラスも酒を飲むことは飲むが、その量は到底シリアには及ばない。 彼女はかつて、最高15杯もの酒を一晩で飲み干した記録がある。 その日を堺に、「酒飲みの女王」なる異名が付けられたのだ。 彼女の飲みっぷりを横で見ていた金髪の青年レインがふとつぶやいた。 「酒飲みすぎやぁ〜!と叫(酒)んでみた」 「シリアみたいな酒飲みは、知り合い(シリアい)にもおらんで」 レインのくだらないダジャレにはもうみんな慣れてしまっているのか、それには誰もツッコまなかった。 「そういえば、カインの奴はどこへ行ったんだ? ・・・さっきから姿が見えねぇけどよ」 「半年ぶりにせっかく会ったというのに、つれないわねぇ・・・」 カインとは、聖ヘレンズ国将軍カイン・ヴァンスのことである。 彼とは偶然、聖ヘレンズ城下町の「とある店」で出会った。 レア物好き同士、まさに運命の出会いでもあった。 そのカインの姿が今は見あたらない。どこかへ出かけたのだろうか。 ・・・アイリスの墓・・・ 「カインさん、お久しぶりですじゃ・・・」 アイリスの祖父ジャッカルが、カインの傍に腰を下ろした。 「ジャッカルさん・・・」 「それは、シェリーの花ですな。あの子の好きな花をよくご存じで」 「以前、彼女から聞いたことがあったので。 この花の花言葉は、永遠の誓いだとか・・・」 「ほっほっ、その通りですじゃ。あの子は、花言葉を好んでいたようです」 アイリスは花言葉を調べてから、よく花を購入していた。 それはカインも記憶していた。そして彼女が一番好きだった花。 それがこのシェリーの花。 ジャッカルは立ち上がると、アイリスの眠る墓を見つめた。 「・・・もう、あれから半年が経ちますかのぉ」 「・・・えぇ」 「カインさんがここへ来てくれて、あの子も、きっと喜んでおることでしょう」 「・・・・・・」 「ワシには、あの子が喜んでいる姿が思い浮かびます」 「アイリス・・・」 カインは墓にシェリーの花を捧げ、ゆっくりと目を閉じた。 ・・・ここへ来るたびに、君のことを思い出す。 君と一緒にいる時、すごく自分に素直になれた気がした。 だけど・・・もう君はここにはいない・・・。 そう思うと、時々、胸が苦しくなる。 もう決して戻ることのない刻。戻すことのできない刻。 もし願いが叶うのならば、もう一度君に会いたい・・・。 その時、君に言う言葉はもう決まっている。 「訪れたよ、平和な時代・・・」 |