「ここで、お別れだな」 レイン・シャルタスは大きな荷物を肩に背負い、カインたちに一言告げた。 カインは握手を交わすと、レインの肩に手を置き、ぎゅっとつかんだ。 「レイン、また会おう!」 「あぁ、必ず・・・。今度会う時は一流の剣士として、だ」 そしてレインはカインたちのもとを離れていった。 「ふぅ・・・レインの奴、いっちまったか」 錬金術士であるダグラスは、姿の見えなくなったレインを確認し、カインの方を振り向いた。 「そろそろ俺も行くとすっかな」 「ダグラス、これからどこへ行くんだ?」 「炎の洞窟だ。あそこには火竜サラマンダーって奴がいてよぉ・・・ そいつの牙はかなりのレア物だ。」 「火竜サラマンダーの牙か・・・」 「お前さんも一緒に行くかい?」 「いや、俺は城へ戻る。休暇も終わる頃だからな」 「そうか。まぁ、そりゃそうだな、はっはっはっ」 ダグラスは大声で笑った。その声は周りに大きく響き、道ゆく人々をみんな振り返らせた。 「元気でな、ダグラス」 「おぉう!あばよ、カイン。この世にレア物がある限り、俺たちはまた出会う。・・・そうだろ?」 「あぁ、その通りだ」 ダグラスもまた、旅立っていった。未知なるレア物を求めて。 その場にただ1人残されたカインは、手にしていた聖剣ファルコンを眺め、その剣を軽く一振りした。 (城の者である以上、俺は戦い続けなければならない・・・ だが戦いを続ける以上・・・必ず犠牲は出る・・・ ヴェイク将軍・・・貴方の気持ちが、今の俺には痛いほどわかります。 ・・・アイリス・・・俺は・・・) 「訪れるといいですね・・・平和な時代・・・。」 アイリスのあの日、あの時の言葉が、脳裏に何度も浮かんだ。 (人の死というのは・・・こんなにも辛いものなのか・・・) 深い悲しみを心に刻み、カインはその場に泣き崩れた。 夕焼け空の虚空の下で・・・。 |