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第11話「ディアという女U」


聖ヘレンズ城にあるカイン・ヴァンス将軍の寝室に、1人の女性が入ってきた。
「カイン、います?入りますよ」
その女性の名は、リナ・ロンドという。
カインと同じ聖ヘレンズ国将軍であり、唯一の女性である。
今日は全世界の人々にとって、月に一度の休暇の日「女神の記念日」と呼ばれる日だ。
この日は全世界の人々が休暇をとる。無論、酒場も、どの店も開いてはいない。
そして、将軍たちも例外ではなく、門番でさえも休暇をとっている。
この日に魔物たちが攻めて来ないのは、不思議といえば不思議である。
魔物たちは思考能力が乏しいためであろうか。

カインの部屋には、1人の女性がいた。
「アヤメ!?貴方、ここで何をしているの?」
「あ!リナ将軍!」
アヤメと呼ばれたその女性はリナ将軍の部下の1人である。
彼女は赤い髪をしており、歳は15、6くらいか。活発な印象を受ける。
「あ、いえ、ちょっとカイン将軍に相談を・・・」
「もう、あまりカインを困らせてはだめよ」
「はい、わかってま〜す」
「それじゃカイン様、また相談にのってくださいね♪」
「あ、あぁ・・・」
アヤメはそそくさと部屋を出て行った。
リナはため息をついて、カインの傍に置かれている椅子に腰掛けた。

「リナ?どうしたんだ?・・・その紙は?」
カインは、リナが手にしている一枚の紙切れに目を向けた。
「手配書よ」
「手配書?・・・誰だ?」
「カイン、DCCって、知っています?」
「DCC?いや、聞かない名だ」
「・・・まぁ、知らないのも無理はないですね。裏組織ですので。
 異教徒側による反帝国組織です。最近活動が目立ってきています」
「その組織のリーダーがディア・・・か」
「ええ、彼女の素性は不明ですが、あのバルテス・アルードと関係があるようです」
「なっ・・・!?バルテス・・・アルードだと!?」
カインは窓際にいき、辺り一面に広がっている青空を眺めた。
バルテス・アルードという名は、カインもよく知っている名前だった。
それもそのはず、彼は一度そのバルテスという男と戦ったことがあるのだから。
その時はシェイド・ハーベルト将軍が止めにきたため勝負はつかずじまいだったが、
明らかにカインに分が悪かったのは、誰の目からみても明らかだった。
「少し面倒なことになってきたな。それで、そのディアを捕らえろと?」
「いえ、ラーハルト司令からは直接、命令は出ていません。
 ただ、注意しておくべき人物だと思うので・・・」
「わかった、ありがとう」
カインはリナからその手配書を受け取り、それに印刷されたディアの顔を見た。
「この女性か・・・。なぜだか、深い悲しみを感じる・・・なぜだ」
「・・・・・・。」
「いずれ、この女性とは出会う・・・なぜか、そんな気がするよ」
「・・・えぇ、避けては通れない相手かもしれませんね」

・・・バプテスマの塔・・・

「この塔がある限り・・・私の心は永遠に閉ざされたままだ!」
ディアは拳を握りしめ、眼前にそびえ立つ巨大な塔を見上げた。
バプテスマの塔、別名「嘆きの鐘」とも呼ばれる異教徒の処刑場のことである。
ディアたちDCCの目的は、この塔の破壊。だがこの塔は厳重な警備と仕掛けが
施されているため、ディアといえど、そうそう立ち入ることはできない。
「ディアさん、今はまだ無理です・・・今はまだ・・・」
「あぁ、わかっているさ」
ディアは後ろを振り返り、その塔を後にした。
(クレス、あんたの仇は私がとってやるからね・・・必ず)

カインとディアが出会うのは、もう少し後の話である・・・。


第11話 「ディアという女U」完