聖ヘレンズ城の2Fにあるテラスで、長髪の男が物思いにふけっている。 銀髪のその男は聖ヘレンズ四大将軍の1人、シェイド・ハーベルトである。 傍にいたショートカットの髪型をした女性が、シェイドに話しかけた。 彼女の名はサーラ。シェイドの部下である。 「シェイド様、思い詰めた顔をしていらっしゃいますね」 「・・・そう見えるか?」 シェイドはその女性の顔を見ることもなく、空を見上げながら答えた。 「はい。いつものシェイド様とは違う表情をなさってますよ」 「ふ・・・そうか」 「ある男のことを考えていた」 サーラは不思議そうにシェイドを見た。 「ある男というのは?」 「ヴェイク。ヴェイク・ジェイルという男だ」 少なくとも、サーラはヴェイクという男は記憶にはない。 それもそのはずである。彼女は最近この城の兵士になったばかりなのだから。 まだサーラは15の年齢。その若さで聖ヘレンズ国四大将軍の中でも最強を誇る シェイド・ハーベルトの下につけたことは、彼女にとっては最大の幸せであった。 「ヴェイクという人は、シェイド将軍とは・・・」 サーラは恐る恐るヴェイクという人物について聞き出そうとした。 その理由として、まずシェイドは他人にはあまり関心をもたないことが挙げられる。 そのシェイドが他人のことを思うことは、本当に珍しいことであった。 サーラも今日、初めてシェイドが他人のことを口に出したのを聞いたため、 未だに驚きを隠せないでいるし、またそのヴェイクという人物に興味をもった。 「・・・。」 「ヴェイクは・・・聖ヘレンズ国将軍だった」 「え!?」 まさに衝撃の事実である。 聖ヘレンズ国将軍は、シェイドの他にはユウ将軍、リナ将軍、そしてカイン将軍しか いないものと思っていたからだ。 まさか将軍が5人いたなどという話は、誰からも聞かされてはいない。 「将軍は5人いたのですね・・・」 「いや、それは違うな。奴が将軍の地位を返上した後で、 カインが将軍となった。人数自体は何も変わってはいない」 シェイドはそう言うと傍に置いたマントを羽織り、その場を立ち去ろうとした。 「ワインでも飲んでくる」 「シェイド様、お待ち下さい。私もお供します」 サーラはシェイドの後に続いた。 私もヴェイクという人のように、シェイド様の記憶に残る女になりたい。 そういう願いを込めて、新たな決意を胸にしまい込んだ。 シェイドは微かな微笑みを残し、ふと囁いた(ささやいた)。 「ヴェイク・・・俺にも、守りたい者が現れたようだ」 |