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第3話「ユウとルカが出会った日」 ぷち/著


…これはルカがまだ子猫だった頃のお話。


「ルカしゃん、ルカしゃん!こっちに木苺があるデシ!」
ベージュ色の大きな耳をした子猫が木陰から顔を出した。
「とっても美味しそうダニ!木苺も持って帰るダニ。」
ヨタヨタと歩くルカの両手は、既に木の実や果物でいっぱいだった。
この2匹の子猫は、この森に住む仲の良い兄弟である。
ルカとテイルはいつものように森に遊びに来ていた。

「……?今、何か聞こえたダニ。」
後ろを振り向いて、静かに森の奥を見つめた。
「ちょっと見て来るダニ!」
ルカは抱えていた果物をその場に置いて、森の奥へと走って行った。
すると、遠くから人間の話し声が聞こえて来た。
「我々にとって聖魔の存在は邪魔だな…。」
「特に火の属性は危険だ。この森ごと滅ぼす必要があるだろう。」
話していたのは黒いマントをまとった背の高い男2人だった。
「た、大変ダニ…早く皆に知らせないとこの森が…。」
ルカは慌ててテイルのもとへ戻ろうとした。そのとき…
「誰だっ!!」
黒いマントをひるがえし、男はルカの元へ近づいて来た。
「おやおや…子猫ちゃん。今の話、聞いたかな?」
男は冷ややかに笑みを浮かべ、そっと剣を抜いた。
そのとき、ルカのすぐ後ろで幼い人間の声がした。
「父さん、猫だ!猫がいるよ!」
「本当だ。どれどれ迷子の聖魔かな?」
少年は震えているルカを抱き上げた。
「やっぱり迷子みたい。こんなに震えてる…。」
黒いマントの男は、そっと剣を戻しながら言った。
「悪いがその猫を返してもらおうか…。」
「…嫌だ。こんなに震えてるじゃないか!お前を怖がってる!」
とっさに少年はルカを背中に隠した。
「…ほぅ。話の分からない坊やだな。」
黒いマントの男は一瞬の早さで剣を抜いた。
矛先はまさしくルカと銀髪の少年だった。
少年は思わず目を閉じた。殺される………っ。
そう思った瞬間、父親の大きな体に包まれた。
「父さんっ!!!?」
息子をかばった父親の背中は深く切り裂かれた。
真っ赤な温かい血がルカの顔にしたたり落ちた。
「ばかなマネを…。」
「…おい、聖魔たちが気づき始めた。騒ぎを大きくするな。」
少し離れた場所に立って様子を見ていたもう1人の男が口を開いた。
「ちっ…。」
黒いマントの男は足早に森を去って行った。
「父さん…ごめん。ごめんなさい…。」
「何故、謝る…お前は聖魔を守ったんだ。謝ることはない。」
「………父さん。」
その後、父親が口を開くことはなかった…。

「ルカしゃん!探したデシよ!!」
しばらくしてテイルがルカを見つけ出した。
ルカは森中に響くくらい大きな声で泣き出した。
テイルは手に持っていた木苺をルカに渡した。
「ち…ちゃんとルカしゃんの分もあるデシよっ!?」
父親を失った少年は何かを考えるように遠くを見ていた。
涙を我慢するように何度も空を見上げていた。


それがボクとユウしゃんの出会い…。
ボクはずっとユウしゃんのそばにいるダニ。
恩返しが出来るその日まで…。



第3話 「ユウとルカが出会った日」完