南クロス城。その城は、ガイア世界の東にあるクロス大陸の南にあった。 クロス大陸は北クロス城と南クロス城の2つの城によって統治されている。 北クロス城は剣術国として有名だが、ここ南クロス城は魔法国として広く知られている。 その城の、とある一室で、やけに甲高い男の声が城中に響き渡った。 「ぐはっ!チョモランマーっ!!」 「と、トレビアン様!?」 「ちょっとそこのあんた!!手加減しなさいよーっ!!」 トレビアンと言われたその男。容姿は美形で、金髪。細身で身長もなかなか高い。 さらに彼は、この南クロス城のれっきとした王子である。 彼の名はトレビアン・ガンダム・マンダム。 そんな完璧な彼にもひとつだけ、欠点があった。 あろうことか、ある日を境に男しか愛せなくなってしまったのである。 なぜか町の女たちからは"トレ様"と呼ばれ、愛されているが、 当の本人はそれを苦痛に感じ、黄色い声援を送ろうものなら必ずこう返される。 「おだまり小娘!!」 「私ゃ、あんたたちに用はないのよーっ!!」 「私が用があるのは・・・。はふん、もちろんわかっているわよねーっ、セイルちゃん?」 セイルという若者は、1ヶ月前からこの地に訪れた旅人である。 歳は18歳〜20歳くらいに見え、髪は綺麗な青色をしている。見た目は美青年である。 話がずれてしまったが、つまり彼(トレビアン)は今、セイルに夢中なのである。 たとえどんなにかわいくて、美しい娘でもセイルには到底かなわない。 それほどまでに、トレビアンはセイルを好きになってしまったのだ。 ・・・で話を元に戻すが、今トレビアンは城の兵士を相手に猛特訓中なのである。 彼が己の体を鍛える目的は唯1つ、あのセイルに勝つためである。 トレビアンは過去に何度もセイルに愛をもって攻め寄った。 だが、結果はセイルの剣によっていつも惨敗・・・というわけである。 今日こそは、と彼は新たな必殺技なるものを開発するべく猛特訓中なのである。 「いくわっ!名付けて、お色気流!!スペシャルワンダフルグレートあいたっ舌かんだーっ!!」 「ぬぁ!!足つった足っ!!」 トレビアンは足の痛みからか、部屋中をのたうちまわっている。 「トレビアン様!!大丈夫ですかっ!お怪我はございませんかっ!?」 「あぁ・・・トレビアン様。猛特訓、お辛いでしょうに・・・。 できるものなら替わって差し上げたいものを・・・」 この兵士もまた馬鹿である。 「いいの、私泣かない!・・・だって男の子だもん☆」 「と、トレビアン様ーっ!!このバイス、どこまでも貴方についていきますぞっ!!」 「ええ、私についてらっしゃーい!ビュリホーッ!!」 こうして2人は友情を固めつつ、打倒セイルに向けて今日もまた汗を流すのであった。 そして2日後・・・。 「まーた会ったわねーっ、セイルちゃん!私の後を付けてきちゃったりして・・・はふん。」 「さては、この私のファンねーっ!トレ様ファンクラブ会員ナンバー何番よぉっ!」 青髪の青年は、髪をかき上げ一言つぶやいた。 「ふぅ・・・よくしゃべる奴だ。」 「もうっ、照れちゃって♪か・わ・い・いぐはっ!チョモランマーっ!!」 セイルの剣一振りで決着はついた。結果は今日もトレビアンの惨敗に終わった。 猛特訓した超必殺技を出す前に・・・。 「さすが、私の惚れた男・・・こうでなくっちゃね・・・。」 「まあ、今日のところはカンベンしてあげるわっ!!次よ!!次見てなさい!!」 トレビアンが退散しようとした次の瞬間、衝撃の事実がセイルの口から発せられた。 「お前、なにか勘違いしていないか?」 「え!?」 「私は・・・女だ。」 それはカインと出会う少し前の、トレビアンの淡く切ない失恋物語。 |