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第2話「特訓〜愛する者を求めて〜」


南クロス城。その城は、ガイア世界の東にあるクロス大陸の南にあった。
クロス大陸は北クロス城と南クロス城の2つの城によって統治されている。
北クロス城は剣術国として有名だが、ここ南クロス城は魔法国として広く知られている。
その城の、とある一室で、やけに甲高い男の声が城中に響き渡った。
「ぐはっ!チョモランマーっ!!」
「と、トレビアン様!?」
「ちょっとそこのあんた!!手加減しなさいよーっ!!」
トレビアンと言われたその男。容姿は美形で、金髪。細身で身長もなかなか高い。
さらに彼は、この南クロス城のれっきとした王子である。
彼の名はトレビアン・ガンダム・マンダム。
そんな完璧な彼にもひとつだけ、欠点があった。
あろうことか、ある日を境に男しか愛せなくなってしまったのである。

なぜか町の女たちからは"トレ様"と呼ばれ、愛されているが、
当の本人はそれを苦痛に感じ、黄色い声援を送ろうものなら必ずこう返される。
「おだまり小娘!!」
「私ゃ、あんたたちに用はないのよーっ!!」
「私が用があるのは・・・。はふん、もちろんわかっているわよねーっ、セイルちゃん?」
セイルという若者は、1ヶ月前からこの地に訪れた旅人である。
歳は18歳〜20歳くらいに見え、髪は綺麗な青色をしている。見た目は美青年である。

話がずれてしまったが、つまり彼(トレビアン)は今、セイルに夢中なのである。
たとえどんなにかわいくて、美しい娘でもセイルには到底かなわない。
それほどまでに、トレビアンはセイルを好きになってしまったのだ。
・・・で話を元に戻すが、今トレビアンは城の兵士を相手に猛特訓中なのである。
彼が己の体を鍛える目的は唯1つ、あのセイルに勝つためである。
トレビアンは過去に何度もセイルに愛をもって攻め寄った。
だが、結果はセイルの剣によっていつも惨敗・・・というわけである。
今日こそは、と彼は新たな必殺技なるものを開発するべく猛特訓中なのである。
「いくわっ!名付けて、お色気流!!スペシャルワンダフルグレートあいたっ舌かんだーっ!!」
「ぬぁ!!足つった足っ!!」
トレビアンは足の痛みからか、部屋中をのたうちまわっている。
「トレビアン様!!大丈夫ですかっ!お怪我はございませんかっ!?」
「あぁ・・・トレビアン様。猛特訓、お辛いでしょうに・・・。 できるものなら替わって差し上げたいものを・・・」
この兵士もまた馬鹿である。
「いいの、私泣かない!・・・だって男の子だもん☆」
「と、トレビアン様ーっ!!このバイス、どこまでも貴方についていきますぞっ!!」
「ええ、私についてらっしゃーい!ビュリホーッ!!」
こうして2人は友情を固めつつ、打倒セイルに向けて今日もまた汗を流すのであった。

そして2日後・・・。
「まーた会ったわねーっ、セイルちゃん!私の後を付けてきちゃったりして・・・はふん。」
「さては、この私のファンねーっ!トレ様ファンクラブ会員ナンバー何番よぉっ!」
青髪の青年は、髪をかき上げ一言つぶやいた。
「ふぅ・・・よくしゃべる奴だ。」
「もうっ、照れちゃって♪か・わ・い・いぐはっ!チョモランマーっ!!」
セイルの剣一振りで決着はついた。結果は今日もトレビアンの惨敗に終わった。
猛特訓した超必殺技を出す前に・・・。
「さすが、私の惚れた男・・・こうでなくっちゃね・・・。」
「まあ、今日のところはカンベンしてあげるわっ!!次よ!!次見てなさい!!」

トレビアンが退散しようとした次の瞬間、衝撃の事実がセイルの口から発せられた。
「お前、なにか勘違いしていないか?」
「え!?」
「私は・・・女だ。」
それはカインと出会う少し前の、トレビアンの淡く切ない失恋物語。


第2話 「特訓〜愛する者を求めて〜」完