◆究極兵器ペペロン?◆  聖ヘレンズの将軍カイン・ヴァンス。  その彼に復讐を誓う男たちがいた。彼らは瞬殺の流星と呼ばれる3人の男たち。  山賊バズー、リッチー、ジード。  彼ら3人は、憎き宿敵カイン・ヴァンス打倒の為に、ある秘密兵器を手に入れたのだった。  そんな3人は、今灼熱の太陽が照りつける海岸線にいた。  太陽の光が肌に突き刺さるように痛い日差しの下、すっかり真っ黒に焼けた肌になっている。  そんな男たちの前に、ついに念願の宿敵はあらわれた。 「ナーハッハッハッハッ、カイン・ヴァンス。ここで会ったが100光年目!」 「おい、お前たち。100光年じゃなくて、100年だろう」 「・・・ナーハッハッハッハッ、カイン・ヴァンス。ここで会ったが100年目!」  ついに念願の宿敵に遭遇したバズーたち。だがカインに指摘されて、慌てて言い直すバズー。 (今、無かったことにしたよな) (兄貴、かっこ悪い)  そんな頼りない兄貴分の姿に、弟分のリッチーとジードは小さく囁く。  だが、そんな弟分たちの声の聞こえないバズーは堂々とした態度で言い放った。 「カイン・ヴァンス、お前がこの場所に来るのを待って、俺たちは10日間もこの場所にいたのだ。見ろ、そのおかげでこの真っ黒に焼けた肉体を」 「ハッ」 「フンッ」  意味もなく、黒く焼けた肉体を見せびらかす3人の山賊たち。  そんな姿に呆れながらカインは言った。 「お前たち、まだ懲りないようだな」  この3人の山賊たちとカインの因縁は浅からぬものがあるのだ。とはいえ、過去の戦いにおいて常に勝ってきたのは、カインであり、バズーたちはそのたびにけちょんけちょんにやられてきたのだった。  だが、そんなカインを相手に憎き怨讐を見るように、バズー立ち3人は言い放つ。 「当たり前だ!俺たちはお前に勝つまで、絶対に復讐を諦めない!」 「そうだそうだ。お前に過去何度もやられたせいで、俺たちは山賊家業ができなくなったんだぞ!」 「今じゃ山にいられない俺たちは、海賊になっちまったんだからな!」  と、山賊改め、海賊となったバズーたち。 「そうだったのか。だが、山賊をやめて海賊になるとは、お前たちも改心するつもりはないようだな」  そういい、鞘に手をかけるカイン。 「ムッ?やろうっていうのか!  だがいいだろう。カイン・ヴァンス。  今日の俺たちを、今までの俺たちと思うなよ」 「そうだぞ、俺たちはこの日の為にとっておきの秘密兵器を用意したのだ」 「どうだ、すごいだろう。  6ヶ月間もアルバイトして手に入れた金をつぎ込んで用意した秘密兵器だぞ」  バズー、リッチーの堂々たる宣告。そして、ジードの間抜けな宣言。  その間抜けな言葉に、カインが思わずガクリと姿勢を崩しそうになる。 「まじめにアルバイトしてるなら。海賊になるなよ」 「うるさい!  いいか、お前の命は今日までだからな!  いでよ、究極の兵器ペペロン乙!」 ―――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッッッッッッッッ!!!!!  バズーが天に向けて叫んだ瞬間、それは豪快なジェットの音を立てながら地上へと降りてきた。 「なっ、なんだあれは!」  その異様に驚くカイン。 「ナーッハッハッハッハッ、これこそが俺たちの秘密兵器!  ペペロン乙。  言っておくが今までのペペロンと同じと思うなよ」 「クッ、とんでもない奴が現れたな」  ペペロン乙の姿を見てとり、相手が油断ならない強敵だと構えるカイン。 ―――ズズンッ  空中より降り立ったペペロン乙は、目の前に見るカインに対して無機質な機械の視線を向けた。 「さあ、やってしまえ、ペペロン乙!」 「・・・・・・なんだ、全然動かないぞこいつ?」  だが、バズーの宣言に反して、ペペロン乙は全く動こうとしなかった。 「ど、どうしたペペロン乙。どうして戦わない」 「イヤヤワ。私女ノ子ヤカラ。戦ウナンテデキンワ」 「ハァイ?」  機械の武骨な姿をしたペペロン乙が、腰を「クネリ♪」と動かして、怯えるように言った。 「な、なんだと。  ペペロン乙、俺たちは憎きカイン・ヴァンスを倒すために、お前を手に入れたんだぞ」 「イヤヨ。ワタシ戦ワナイ」 「ナッ、何ー!」  思わぬペペロン乙の行動に、バズー達3人は戸惑う。  カインに至っては、もはや目の前のやりとりにあきれ返って言葉すら出てこない。 「戦ウナンテ、イヤ。  ソレヨリ、ダーリン。セッカク海ニキタノヨ。  デートヲ、シマショウ♪」 ―――クネリ♪    腰をくねらせるペペロン乙。  その視線はバズーへと注がれていた。 「待て、デートだと!」  とんでもないペペロン乙の言葉に、叫び声をあげるバズー。  そして、ペペロン乙の武骨な機械の腕が「ガシリ」とバズーを捕まえた。  当たり前だが、機械の力にバズーは身動きすら取れず抵抗できない。  おまけに、金属の腕は灼熱の太陽に熱されていて、触られた瞬間にバズーの体は大やけどをしそうになる。 「あっ、アチチチチアチチチ。頼む。離れろ。離れてくれ!  でないと焼け死ぬ!」 「モウ、イヤヤワ。抱イタダケデ暑熱クテ死ニソウヤナンテ。ダーリンハ、初心ネ」 「違うー」 「モウ、テレヤサン♪」 「リッチー、ジード。頼む、助けてくれ」  悲鳴に近い声で弟分たちに助けを求めるバズー。  だが、それよりも早くペペロン乙が、背中のジェットをふかして空へと飛び立つ。 「ダーリン、愛ノ逃避行ヨ♪」  嬉しそうな声を出して、乙女な機械ペペロン乙は、愛するバズーを抱いて遥かかなたの空へ飛び立っていった。 「ああ、なんてこったバズーが連れてかれちまった」  兄貴分が連れ去られたことに、リッチーが嘆く。 「いいなー。俺、まだデートしたことない」  ジードに至っては、羨ましがる始末だ。 「何だっ、結局あれはなんだったんだ?」  目の前で展開した光景に、カインもそうつぶやく。だがしかしそれ以上深くは考えないことにした。というか、考えたくもなかった。 =完= ◆投稿者のコメント◆ この話はフリージアで目立つことのない地味なやられ役3人組「瞬殺の流星」こと、 バズー、リッチー、ジード、そしてペペロンの、3人と1機を中心にしたラヴ(???)コメディーです。 ◆企画者のコメント◆ 脇役にスポットをあてた、ほのぼのとしたストーリーですね。 カイン達を10日間も同じ場所で待っている根性はたいしたものです。 きっと10日間の食料を用意していたのでしょう。かなりの努力家です。 ペペロン乙の登場で、やっとカイン達に一矢報いることが出来るはずが、 まさかの女の子設定に笑ってしまいました♪