聖へレンズ復興記2・ルイが将軍になった理由 兵1「ユウ将軍、南の洞窟に魔獣が現れました!」 ユウ「おう任せろ!討伐に行くぜ!」 兵2「ユウ将軍、飛竜山にも………」 ユウ「問題ねえ、すぐにそっちにも行く!」 兵3「ユウ将軍、エル・デ・ルスタの街で町民同士が喧騒を起こしています。」 ユウ「お……おお、上級兵を向かわせる!」 兵4「ユウ将軍、城のトイレが汚れております!」 ユウ「………お前掃除しておけ。」 無敵を誇った聖ヘレンズ国四大将軍も、かの「血の聖戦」以後、二人がその姿を消し、一人は王に就任した。 そして残ったたった一人の将軍、ユウ=スティンは多忙を極めていた。 何しろ今まで四大将軍が行っていた仕事、さらには同じく不在となった参謀・指令の仕事まで、今やユウが一人でこなしているのだ。 ユウ「だああああ!こんなのやってられるか!!シェイド!」 上級兵1「コホン………ユウ将軍………」 ユウ「あ………シェ、シェイド王様、お話がございますです。」 シェイド「………無理に敬語を使わんでいい。」 ユウ「おお〜、さすがシェイド、話がわかるぜv」 シェイド「レモリアのハンターあたりにお前とキャラがかぶる奴がいる気がする………して、何のようだ?」 ユウ「ああ、聖ヘレンズ国の人材不足を解消しようって話だ。いくらオレでも将軍がオレ一人じゃこの城を守りきれねえ。つーかシェイドが王になってから、辛いし、忙しいし、寝る暇ねえし……」 シェイド「やかましい!………しかしユウの話にも一理あるな。確かに先の戦い以後、聖ヘレンズ国は深刻な人材不足に苦しんでいる。」 ユウ「そこでだ、せめて将軍をもう一人増やさねえか?」 シェイド「ああ、できればそれに越したことはないが………しかし、肝心の人材がおらん。ラーハルトの手により、上級兵は壊滅的な打撃。カインやリナには有望な若手が付いていたが、それも全員が死んだか行方不明だからな。」 ユウ「へっへっへ、ところがいるんだな。その人材って奴が。」 シェイド「何ッ!………どこにだ!?」 ユウ「ルイ兄さ!」 シェイド「ルイ=スティンか!?………なるほど、奴なら城の将軍クラスの実力を十二分に備えている。………悪くない。しかし、本人が承知するか?」 ユウ「させるんだよ!聖ヘレンズ国のため!そして、このきつい生活からおさらばするためだ!」 シェイド「そ……そうか;わかった、ルイ=スティンの説得は兄弟であるお前が適任だろう。行ってこい。」 ユウ「任せろ!一ヶ月もあればルイ兄を連れてくるからな。」 シェイド「ちょっと待て!何でそんなにかかる?」 ユウ「ルイ兄がどこにいるのかわからない!探すところから始めるとそのくらいかかる!以上!」 シェイド「………二週間だ。それ以上は待てない。」 ユウ「うげっ、羽を伸ばせる………いやいやルイ兄を探すための期間がたった二週間かよ。」 シェイド「早く行ってこい。帰ってきたら二週間分の仕事をやってもらうからな。」 ユウ「へ〜い。」 兵1「しかしユウ将軍、手がかりなしではこの広いヴィッツア大陸、いや、下手したら既に他大陸へ渡っておられるかも………そうなったら二週間はおろか一ヶ月あっても探しきれません。何かルイ様の居場所に当てはあるのですか?」 ユウ「ああ、あるぜ、とっておきのがな!」 兵1「そ………それは!?」 ユウ「ルイ兄は親父の仇であるバジルを討ちたがっている。つまりルイ兄の居場所はバジルの現れそうな場所だ!」 兵1「な……なるほど!それは道理です。それで、バジルの現れそうな場所に当ては!?」 ユウ「わかりきった事を聞くんじゃねえ。もちろんないぜ。」 兵1「あららっ………」 ユウ「だ、だから、とにかくまずは情報収集だ。野郎ども、酒場へ行くぜ!」 兵2「は………はいっ!」 兵3「ひょっとして将軍………単に酒場へ行きたかっただけですか?」 ユウ「く……くだらない邪推をすんじゃねえ!おら、とっととしろ!」 兵3「………はい。(完全に否定しないところを見ると当たったようだな………)」 ユウ「マスター、オレンジジュース。」 マスター「かしこまりました。」 ユウ「それとだ、魔将軍に関する情報はねえか?特にバジルって奴の居場所が知りたいんだが………」 マスター「魔将軍バジル………ですか?いえ、そういった情報は特に………」 ユウ「出てきそうな場所の見当だけでもいいんだが………」 マスター「当方には皆目………」 ルイ「案外この町に現れるかもしれんぞ。復興したばかりの街を破壊し、町民を絶望に陥れるなど、いかにも奴のやりそうなことだ。」 ユウ「おお〜、それは一理あるな。なら早速城下街に網を………って………ル、ル、ル、ルイ兄!何でこんなところにいるんだ!」 ルイ「バジルが現れそうだからだ。」 ユウ「くう〜〜さすがオレ!予想どんぴしゃじゃねえか!」 ルイ「何のことだ;」 ユウ「つーか何でもう出てきちゃうんだよ!折角二週間は休めると思ったのに!」 ルイ「知るか………ところでその口調からしてオレを探していたのか?」 ユウ「お、おうそうだ。ルイ兄に用があったんだ。えーっと………おい兵3、何の用だっけ?ド忘れしちまったぜ。」 兵3「………やっぱり二週間遊ぶことしか頭になかったんですね。」 ユウ「ち………違うって!バジルやルイ兄の情報収集しているうちに忘れちまったんだよ!」 兵3「情報収集3分前に始めたばっかりじゃないですか。」 ユウ「う………そ、そうだ、思い出したぞ。突然ですまないが、ルイ兄には将軍になってもらうぜ!」 ルイ「………本当に突然だな;」 ユウ「将軍はいいぜ〜!お城に暮らせるし、コックの飯はうまいし、女にもてるからな。」 ルイ「………興味はない。」 兵2「むしろユウ将軍女にもててませんよ。」 ユウ「う、うるせえ!言葉巧みにルイ兄を騙そうとしてんだから余計な口を挟むな!」 ルイ「騙す気だったのか。」 ユウ「あれ?どうしてばれたんだ?」 ルイ「………………」 兵1「でもユウ将軍この前の選挙で男性には割りと人気がありましたよね。」 ユウ「けっ!男にもてても全然嬉しくないってーの!」 兵3「それと、女性でも子供にはユウ将軍は人気あるみたいですよ。」 兵2「そうそう、子供は男でも女でも将軍に憧れるものですからね。」 ユウ「ガキにもててもそれこそ嬉しくないっつーの!そ…そうだ!聖ヘレンズ国名産のたこわさびも将軍になれば食えるぜ!」 兵2「ならなくても食えますよ」 ユウ「だから黙ってろって!」 ルイ「わかった、将軍になろう。」 ユウ「ええっ!たこわさびで!?」 ルイ「違う!………将軍になった方がバジルと戦うチャンスも増えると思ってな。」 ユウ「おお〜そりゃそうだな!じゃ、決定〜。」 こうして、聖ヘレンズ新将軍にルイが就任し、レモリア王国と並ぶ兄弟将軍としてその名をガイア世界全土に轟かせた。 仕官と同時に下級兵・上級兵をすっ飛ばしいきなり将軍になることへの反発も予想されたが、ルイの実力の前にそんな懸念は杞憂に終わった。 兵1「ルイ将軍、カクラム大聖堂の魔物が暴れだそうとしています!」 ルイ「わかった、現場へ急行する。」 兵2「ルイ将軍、ライドネルの村でも奇妙な事件が発生しているようです!」 ルイ「問題ない。カクラム大聖堂の件を片付けた上で直行する。」 兵3「ルイ将軍、イージスの町では山賊が強奪行為を行っているようです!」 ルイ「既に手は打ってある、DCCからの応援部隊と合流しろ。」 ルイはユウをはるかに上回る働きを見せ、兵士たちの信頼を得た。 一方……… ユウ「………暇だ。何でこんなにすることねえんだ?………仕方ねえ。ちょっと散歩にでも出かけてみるか。」 ユウが部屋の外に出ると、下級兵二名が、なにやら一悶着起こしているようであった。 兵2「おい兵3、その書類をどこへ持って行く気だ?」 兵3「ユウ将軍のところだが……」 兵2「重要な書類ばかりじゃないか。馬鹿だなあ。ユウ将軍に書類渡したら紙ヒコーキになるのがオチだぞ。こうゆう書類はルイ将軍のところへ持っていくんだ。」 兵3「そ、そうだな!ユウ将軍はあの年でボケが始まっているって噂だからな。うっかり事業を台無しにするところだった。ありがとう!」 (ガーーーン!!!) ユウに9999の精神的ダメージ以下略 ユウ「さ…最近仕事がないと思ったら…そうか、全てルイ兄に持って行ってたんだな…ははは…どうせオレは無能さ。オレに仕事を持ってくる奴なんて一人も…」 (バタンッ!) 兵4「ユウ将軍、大変です!!」 ユウ「おっ、おうっ!どうした!?事件か!?場所はどこだ!?すぐに現場に急行する!任せろ、どんな事件もオレ様の愛と愛と愛で解決してやるぜ!何でもこい!」 兵4「はいっ!城のトイレが詰まっております!配水管の掃除をお願いします!」 ユウ「………わかった。やっとく。」 ◆企画者のコメント◆ ルイが将軍になった理由には、そんなことがあったのですね。 確かに、城にいたほうが情報は入ってきやすいですから。 ユウの扱いというか、ポジションはやはり予想通りでした(笑 ユウが将軍になれたのが不思議ですね。