住民レースは今日も暇 ランスへの山道ではいつものように、住民レースの面々が集っていた。 どうでもいいが、ランス村は山奥にあるド田舎だ。 何しろ、村人全員が石にされてしまうというとんでもない事態にあっても、村人以外のほとんどの人が知らないという、とんでもないど田舎ぶり。 当然、ランス村を訪れる人の数は少なく、さらに山道から外れた場所にある住民レースの存在をしている人間自体が、レアだった。 過去には、カイン将軍やウェイク将軍、ダグラスといった人物が訪れているが、彼らのようなレア・マニアでない限り、こんなところに人がやってくることはまずない。 「ハァ、今日も誰も来ないわね」 ため息をついたのは、住民レースに参加しているミライ姉さん。 「しかたないよ。だって、このレースの存在に気づく人なんて、レア中のレアなんだから。きっと僕たちの存在を知っている人なんてほとんどいないよ」 レースの司会をしているサラムもため息混じりだ。 「フフフフフ、すみっこ万歳」 シゲ爺は1人だけ、なぜか喜んでいる。どうでもいいが、レース会場は山道のすみっこにある。ごく一部の老人たちは、なぜかすみっこを神聖視して、そこに居座ることを至福の喜びとしている。 きっと、歳をとってぼけたせいだろう。 「ふぅ、疲れた。ちょっと休憩だな」 レースをしてるいわけでもないのに、疲れたというクラースおじさん。 昔は美形の青年だったらしいが、今ではただの中年おじさんでしかない。突き出たお腹は、歳とともにメタポリックの危機を訴えている。レースですぐに疲れたというのは、日ごろからの運動不足と、中年太りのせいだった。 「あら、大変。お肌のお手入れをしなくっちゃ」 そんなクラースおじさんのそばでは、コンパクト片手に、化粧直しを始めたアルバミオン様がいた。 この人、金髪のサラサラな髪にエメラルド色の瞳が印象的な美人だ。ただし、ものすごい厚化粧で、たまに分厚い化粧の層にひびがはいる。 レース中によく化粧直ししているのは、化粧にひび割れができるせいだった。 ちなみに、一部では某おかま王子の兄弟(姉妹?)か、親戚ではないかと疑われている。そういえば声もものすごく似ているし・・・ (まさか、この人もおかま?) 「はあ、今日も誰も来ないな」 「今日も暇ね」 「今日も何もすることがなくて、疲れたな」 「すみっこ万歳」 「きゃー、お肌にひび割れが!」 空を見ながら退屈に時間を過ごす村人たち。 中には、すみっこにいすわって快感を覚える年寄りや、石膏のように塗り固めた厚化粧が剥落して嘆いている人もいる。 ・・・ ・・・ ・・・ 山道の片隅でひっそりと行われている住民レースには、今日も誰もやってこない。 何しろレアすぎるものだから・・・ ◆企画者のコメント◆ まさかのミニゲーム「住民レース」出場者の人々に視点をあてた物語。 誰も来ない時は、やっぱり皆さんヒマそうです。 何もそんな目立たないところでレースをしなくても良いんですけれども。 締めくくりにもあるように、レアなレースなのですね。