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moonlight bath 〜A green butterfly〜 - コメット 2006/11/27(Mon) 15:15 No.43

moonlight bath 〜A green butterfly〜 投稿者:コメット 投稿日:2006/11/27(Mon) 15:15 No.43
「何度も〜何度も〜飽きることなくー、白くー、なーが〜れる〜雪〜♪あ、カインさん、季節限定クリスマスバージョンミラクルパン販売開始って書いてある♪カインさん、行ってみましょう!」
「い、いや、俺はもう疲れたからいい…(ん?季節限定?ってことはレア物!)ま、まぁパン屋くらいならいいか。」
今日はクリスマスイヴ。カインとフリージアが訪れた商業都市イージスには雪が降りしきっていた。カイン達は将軍とその仲間達だけのクリスマス会で食べる物を買いに来ていた。カインの腕には七面鳥が吊ってある紐、ビビンバステーキやその他の食品の材料が入った袋がぶら下がっている。フリージアはクッキーが入った缶を数個とレア酒パニュール・ピニョールを持っていた。ユウとルカ、アランとリュウは芸の練習、シェイドはラーハルトから突然の任務を食らって不在。まぁ彼の場合それでいいのだが・・・。ルイとテイルはまだ来てないが、今聖ヘレンズ城に向かっている。リナとその部下達は料理係でカインとフリージアの帰りを待っている。カインは以前、ゴシッペに会ったが、彼はエル・デ・スタの町で講演会を開くので欠席。自身満々の顔で良い顔だった。
話を戻して、カインとフリージアはパン屋に入っていった。フリージアははしゃいでいて、まるで子供のようであった。カインは真っ先にレジに向かった。
「ミラクルパン一つ!表にある看板にあるやつな!」
「あ、カイン将軍!す、すみません、売り切れました・・・」
「何だと!?レア物が売り切れ!?」
「あ、あの、レア物でも何でも無いんですが・・・」
「いや、俺の為に一つくらい残しておいてくれてもよかったんじゃないか?」
カインは自分の駄々を定員に押し付けた。
「カインちゃ〜〜〜ん!!!」
店の入り口から奇声が上がった。その声の主はレジに居るカイン目掛けて突っ込んでいったが、カインは見向きもせずに買い物をし終えたフリージアの元へ(声の主をかわすように)向かった。よって、突然の訪問者の突進照準はレジの元へ・・・。
「フリージア、買い物は済んだか?」
「うん☆さ、次の店にいきましょう♪」
「(まだ行くのか・・・)」
そしてカインとフリージアは店を出た。
「こ・・・これが・・・で、伝説の・・・カップル無視・・・!」
声の主は倒れた。が、パン屋のオーナーの手によって店先に放り出された。

聖ヘレンズ城に続く雪の道。辺りはすでに暗くなっていたが、月光によってかろうじて方角は失われなかった。雪はもうやんでいて、足取りも速かった。そして驚いた事に、冬の夜なのに月光浴している緑色の蝶が何十羽も宙に舞っていた。
「わぁ〜、きれいな蝶がいっぱい♪」
「これはこの辺りに出現する蝶だ。この俺が名前を知らないほどレアな蝶だ。地域限定の蝶とはいえ、出現率は少ない。」
「へー。きっとクリスマスイブだから出てきてくれたんだね♪」
「ああ、そうかもな・・・」
カインはそう言うと、うつむき加減に歩き出した。フリージアは立ち止まっている自分を置いていくように行ってしまうカインを見て、様子がおかしい事を知った。フリージアは追いかけて、カインの、聖ヘレンズ城将軍の鎧に触れた。冷たかった。それは雪と夜の冷気が鎧に染み込んだせいかもしれないが・・・。
「カインさん・・・」
答えるのは宙に舞っている蝶だけだった。

しばらく二人は歩いていた。その二人を追うように緑の蝶もついてきた。そしてその蝶の一匹がカインの頭に止まった。カインはその蝶の羽をつかむと、立ち止まった。フリージアも横に並んだ。
「緑の蝶よ・・・、お前達を異教徒としよう・・・。お前達は俺を許さないか・・・?」
カインは声を落とし、しかしはっきりとつぶやき、フリージアを見つめた。
「フリージア・・・、こいつらが何を言いたいか分かるか?」
フリージアは、カインが手にしている緑の蝶を見た。何とか飛ぼうともがいている。まるで翼をもがれた蝶のように・・・。
「・・・カインさんから離れようとしている・・・。多分、許さないんじゃないかな?」
「そうか・・・」
カインは蝶を放した。緑の蝶は力強く羽ばたき、カインのもとから逃げた。
「異教徒はクリスマスでも・・・逃げつづけている。それなのに、俺はこんな事をしていて良いのだろうか・・・?」
カインは月夜に舞う蝶を見つめながら呟いた。
「・・・それが世の中の条理だとすれば、随分皮肉なものだ」
フリージアにはなんとなく分かるような気がした。そしてなんとなく後ろを振り向いた。
「でも、カインさん、それは違うと思うよ」
「・・・?」
「だって、ほら、カインさんが異教徒と例えた緑の蝶はきれいに躍っているよ」
カインは後ろを振り向いた。そして、その光景に目を奪われた。さっきまでバラバラに舞っていた蝶が、今は一致団結して、テンポ良く舞っていた。フリージアはこの雪の道に響かせるように、声高らかに歌いだした。
「緑の蝶よ、照らーしておーくれ♪僕ーらーのー、歩むべきー、道ーをー♪月ー明ーかーりーが、途絶えーないよーうに♪月夜にー、舞う蝶がー♪」
フリージアの声に合わせて緑の蝶も一緒に舞っていた。
(そうか・・・・・・・・・。きっと異教徒も、隠れながらだが、楽しく躍ったりしているのだろう・・・。)
カインは聖ヘレンズ城の方向を見つめた。月光に煌(きらめ)く雪の道が、聖ヘレンズ城への道へと照らし出していた。
 歌が終わった。後ろを見ると、緑の蝶が去っていくところで、フリージアは手を振っていた。カンも、去っていく蝶を最後まで見届けた。完全に見えなくなると、気合を入れてこう言った。
「よし、フリージア!聖ヘレンズ城に戻るぞ!ルイ達ももう来てるだろう」
「うん☆・・・ってああ!リナさん達、忘れてた!はやく戻ろう!」


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