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Iris's village 〜A piece world〜 - コメット 2006/11/27(Mon) 15:14 No.42

Iris's village 〜A piece world〜 投稿者:コメット 投稿日:2006/11/27(Mon) 15:14 No.42
ランスの村、それはガイア大陸4大大陸の一つ、ヴィッツア大陸にある聖ヘレンズ城より少し西に位置した小さな村である。途中の山道では空魚が出現するが、それらを倒さなければランスの村にはたどり着けない。淋しい村ではあるが、暖かい人たちが住んでいる。
ある暖かい日差しが差す朝、一人の黄色いドレスを着た女性が窓から顔を出した。蒼い髪が風で宙に揺らめく。家の前では5〜6歳くらいの男の子が木の裏に隠れていた。その男の子は自分を見ている女性に気づくと、人差し指を唇にあてた。「静かにして」というメッセージだ。その女性はそっと微笑んだ。かくれんぼでもしているのかな、と思った。
蒼い空を仰いだ。雲一つ見えない。何も悪い事が起こる予感はない。そしてその女性は窓を開けたまま、まだ寝ている弟を起こしに行った。弟の寝顔を覗きこむと、少し笑っていた。あと1分寝かせてあげよう。蒼髪の女性は朝食を食卓に並べ始めた。

昼、蒼髪の女性はランスの村から少し北に位置する魔獣の森に向かった。弟はもう止める事も諦めた。それに、彼女には回復魔法と武器の杖がある。これまでに何回も行った事があるが、傷一つ見せずに弟の元へ無事に帰っている。だがそれは彼女が強いからではなく、運のおかげか敵にあまり遭遇しないからである。
彼女はこの森で聖魔を育てている。逆に言えば魔獣を育てているとも言う。彼女が育てているのはアリードの卵といい、魔獣か聖魔のどちらかが生まれてくるという曰くつきの卵だ。彼女はこの卵から聖魔が生まれてくるように、こうしてこまめに卵を隠してある魔獣の森に来て、この卵に愛を注いできた。何故隠しているのかというと、村の人に魔獣が生まれてくるかもしれないからと言われるに違いないからだ。だが、彼女はこの卵からは聖魔が生まれてくる事を信じていた。
彼女は聖魔の森に行きたがっている。しかし、その森に行くにはヴィッツア大陸をほとんど横断しなければならない。彼女の足ではかなり厳しかった。そしてある日、このアリードの卵を見つけたという事だ。聖魔の森へ行くのは厳しいが、この卵で聖魔が生まれてくればどんなにうれしいだろうか。だから今も彼女はこの卵に愛を注いできたのだ。
いつも通り、森の奥まで入ってきて、卵がある所へ来た。今日も卵は無事だ。少し赤い斑点が見えてきたが、彼女にはこの赤い斑点が何を意味するのかは分からない。ただ抱きかかえて祈り続ける事しかできなかった…。

村へ帰る途中のランスの山道に夕日がかかろうとして、山道にある橋が燃えるように紅(あか)く染まった。この全世界の血の紅い空は、平和を願う蒼髪蒼眼の彼女をちっぽけな存在にし、世界は彼女を嘲(あざわら)うような構図ともとれるのだが、彼女はそんな事は気にしなかった。この時、ただ思った事は自分の蒼を紅く染める夕日が穏やかだな、という事だけだった。
一休みするようにそこにあった岩に座り、夕日を見つめた。この夕日は確かに綺麗ではあったが、やはり嘆きの鐘は止められない。ただ無駄に時が過ぎ、死者が増えるばかりであった。
彼女は一言こう呟いた。それはもう口癖となった言葉…。
訪れるといいな………平和な時代………。


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